ちくまプリマー新書<br> よみがえる天才3 モーツァルト

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ちくまプリマー新書
よみがえる天才3 モーツァルト

  • 著者名:岡田暁生【著】
  • 価格 ¥935(本体¥850)
  • 筑摩書房(2020/09発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480683830

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内容説明

完全なる優美、子どもの無垢、美の残酷、壊れたような狂気、死の臭い、そして楽しさと同居する寂しさ――目まぐるしく濃淡が変化する人間心理の綾を音で描くことができた音楽史上ただ一人の作曲家、モーツァルト。天才少年の殻を自ら打ち破り、初のフリー芸術家という革新的な活動を繰り広げた天才の真実とは?

目次

はじめに
第1章 モーツァルトの比類なさはどこに?
楽しいのに寂しい──強いのに壊れそう
「うつろい」への異常な感性
モーツァルトは特別な人間を描いたりしない
第2章 「天才君」の栄光と悲惨
「天才少年」はいくらでもいる?
レオポルト・モーツァルト──世界で最初の教育パパ
教育ビジネスで成功する!
核家族の温かさと息苦しさ
モーツァルト・ブラザーズ結成!
天才子役の宿命
第3章 「ある」と「なる」──天才の二つのありよう
庇護があった天才となかった天才
天才は末世に生まれる?
時代に殉じるvs.時代を開く
天才は「がんばること」を拒否する?
第4章 失意は天才少年の宿命
天才、二十すぎれば……
モーツァルト、大いに羽をのばす
就活の挫折と母の死
成功するには度胸と計算が要る
たぎる野心と大人の顔
第5章 教育パパの呪縛は結婚で断つ
モーツァルトと父親コンプレックス
お父さんは僕の価値がわかってない!
大脱走
婚約
新婚オペラ
第6章 「天才」とは何?
職人と芸術家の違い
音楽家はいつから「芸術家」になったか?
カントの天才観
モーツァルトはぶっとんでいる
第7章 フリーになるということ
「自分らしくある」ということ
勤め人にならずどう作曲家は食っていくか?
資本主義の黎明期に生まれたモーツァルト
「予約演奏会」は作曲家の個展だ
ピアノ協奏曲の魅力
世界中の人と友達になる夢
第8章 芸術家と実人生
伝記は作品のミステリーを解く鍵?
モーツァルトの創作と母の死
「厳父」の恐怖
女性たちの肖像
第9章 美の冷酷さについて
みなぎる創造力と冷笑
ダ・ポンテ三部作と愛への不信
美のサディズム
モーツァルトの喜劇は痛々しい
真善美をあざ笑う
第10章 実存の不安と「まあこんなものか……」の希望
芸術家は人間についての科学者だ
明るく前向きの達観
啓蒙主義の時代の男女関係
恋愛結婚は近代のイデオロギー?
モーツァルトの幻滅と希望
第11章 「ところで」の奇跡
予告なき改行
モーツァルトは理屈を嘲笑する
生と死の予告なき舞台転換
幸福は突然見いだされる
第12章 流麗さについて──モーツァルトの作曲レッスンを受ける
モーツァルトのテーマはドミソばっかり?
モーツァルトの名作をいじってみる
モーツァルトはドとソだけで何でも出来た
モーツァルトは名ジョッキー
誰もこんな風には作曲できない……
時間の布を切断する
第13章 晴れた日のメランコリー
晩年のモーツァルトはほとんど曲を書いていない?
晴れた青空の諦念
悲しみでも幸せでもない謎の言語
春は巡る
エロスという名の希望
第14章 モーツァルトは神を信じていたか?
死は人間の最上の友?
モーツァルトは宗教音楽と相性が悪かった?
宗教音楽は決まりごとが多い
フリーメーソンのための葬送
近代人と時間の恐怖
第15章 幸福な阿呆に神は宿る
オルゴールのメロディー
魔法の箱を開けてみる
『魔笛』の奇跡
鈴を振り回す子ども
「あれ!」と叫ぶ子ども
人が神に近づくとき
これだけは聴きたいモーツァルト名演奏
モーツァルト略年表
人名
モーツァルト作品索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

卵焼き

77
モーツァルトの人柄、背景がよくわかり、面白かった。2021/11/05

trazom

72
流石に岡田先生。単なる伝記ではなく、モーツァルトの音楽に踏み込んだ一冊であることは、見出しを見ればわかる。「真善美をあざ笑う」「「ところで」の奇跡」「晴れた青空の諦念」「モーツァルトは神を信じていたか」など、作品の本質に関わる問題提起がなされ、岡田先生の見解が示される。ウィーン時代初期のピアノ協奏曲の評価や「ポストホルン」の解釈など、私の考えと異なる部分はあるが、でも、「かなしさは疾走する」(小林秀雄)のようなレトリックで煙に巻くのではなく、具体的な楽曲の例を示して音楽と向き合う姿勢は、とても勉強になる。2020/10/20

1959のコールマン

63
☆4。ちくまプリマ―ということですこし遠慮したのかな?もう少し突っ込んで書いて欲しかった。やはりクラシック畑の人だとここまでが限界なのかな。「ポピュラー音楽なら(ハードロックは別として)「怒」は抜きで、「喜哀楽」に限定されているといっていいかもしれない」p140なんて言ってるし・・・(ラップ、ヒップホップや古くはフォーク、シャンソンなんかどうなんだ)。やはりポピュラー畑の人がモーツァルトを書いて欲しいな。希望はブラック・ミュージック系の人。読んでいるとモーツァルトとの共通点が結構ありそうだ。2020/10/31

ジョンノレン

48
著者本連続読みその1。冒頭から小林秀雄やキルケゴールのモーツァルト感についての違和感に加え、指揮者井上道義氏のフランクで肩の力の抜けたインタビューで、立教時代から巨人入団した頃まで長嶋茂雄氏がモーツァルトを愛聴していたエピソードが紹介されたりと、ぐんぐん吸い込まれる。モーツァルトの天才性や境遇についてはシェーンベルクと対比されるなど、意表をつく展開に目が離せない。勿論想定内の内容も多々ながら、その先というかその背後まで抉り出しエキスパートの面目躍如。オペラ解説本としても秀逸。2023/10/16

まこみや

38
楽器も演奏できないし、楽譜もよめない。音楽理論についても何も知らない。ただ感覚だけで音楽を聴いてきた。そんなないないづくしの私のような者に、近代へと社会の体制と人々の意識が変化する中で、モーツァルトの「天才」を、作品に即して実にわかりやすく教えてくれた。平明で説得力のある文章だと思う。因みにピアノ協奏曲は、これまで吉田秀和さんお薦めのフリードリッヒ・グルダの演奏(最初に買ったモーツァルトの協奏曲だった)を愛聴してきたが、バレンボイム/クレンペラーの25番やカサドゥシュ/セルの27番を早速聴いてみたい。2021/08/27

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