内容説明
日本海軍のシンボルとして不沈を誇りながら、瀬戸内海で謎の沈没を遂げた戦艦「陸奥」。その「陸奥」を巡り、巡洋艦「白馬」の艦長、設計者、そして砲撃を命じた旗艦の艦長の子供たちが辿った数奇な運命とは……。人間の繰り返す普遍的な愚行を、実際の事件を取り入れて描く(表題作)。―太平洋戦争末期から敗戦後の世相を背景に、極限下の人間模様を活写! 他10篇収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
山田太郎
30
なんだかやたらと評価高くなってちょっと違和感感じるというか。なんで、期待が大きすぎたせいかなんだか楽しめなかった。予備知識なしで読んだほうがいいと思いました。2013/09/13
星落秋風五丈原
26
『テンペスト』や、若い男女が愛を育む『青い珊瑚礁』なんぞに騙されてはいけない。島というのは、人間の根底にある欲求が露になる、とっても恐ろしい所だ。本書収録の『裸の島』『女の島』『魔島』は、いずれも戦争の最中に孤島で暮らす事になった日本人達の物語。人間には第一次欲求というのがあるが(食欲、性欲、睡眠)戦争という一種の異常事態の中で、更に世間と隔絶された特殊な状況に置かれた彼等の、とりわけセックスに関する描写がすさまじい。2004/08/19
きょちょ
21
長篇「太陽黒点」は既読。 他、太平洋戦争を背景にした短篇10作。 短篇では、幻想的な部分も含めて、「さようなら」が実に良かった。 「黒衣の聖母」も、ありがちだけれど哀愁漂う好きな作品。 「戦艦陸奥」は、謎の沈没の真相を男女関係に起因させるところは面白い。 しかし、これらの短篇のいくつかは、太平洋戦争を背景にしない現代でも起こりうる事件であり、そう考えると「現代」の怖さにゾッとする・・・。 ★★★★2016/07/18
河内 タッキー
9
いずれもその時代を思いながら読むとノスタルジーに気持ちがざわつく。「太陽黒点」はミステリーというより文学作品でいいのではないかと思う。上の世代からみる下の世代の堕落感への怒り。そこから1周も2周も回って今の自分達がいる。堕落し続けたであろう今の自分達は戦後からどれだけ堕落しているのだろうか?「さようなら」や「黒衣の聖母」も胸が苦しくなるくらいの切なさ。すばらしい。2024/06/04
Chako@(旧名:かど =^ェ^=)
7
全編通してどの作品も、戦時下の青春というキーワードが頭に浮かんだ。巻末解説でも触れてるが、医大生だった著者の戦争体験が影響を及ぼし、作家的思想を熟成させた。数年前に読メ登録した「怪奇篇」のレビューにも戦争の影響があったと記している。やはり初期作品の大半が、過去の日本人の行為を冷徹な視点で描いているなと感じた。どこか自虐的でアイロニーを含んでるところが、この作家をお気に入りとしてる理由なのだが、ますますその想いは揺るがない。主な作品の所感について──最も陰惨でエログロなのが孤島シリーズの三篇で、続く☟2017/09/24