内容説明
「平等」は本当に小うるさい。耳当たりの良いこの言葉が、日本の国柄をズタズタにし、知識偏重との批判が、若者の学力を下げている。このままでは、我が国は危うい。今一度、伝統と良識を見つめ直すべきである。鋭い視点で日本の迷走を叱責しつつ、フェアウェイ上で見かけた、密やかな空気を放つ妖しい男女に気を取られる。ユニークな発想と慧眼で物事の本質を衝く週刊新潮大人気コラム第5弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
27
1453年、ビザンチン帝国の首都が陥落したとき、学者達は図書館の本を燃やされまいと大量に持ち出しヨーロッパへ運んだという(64頁)。アメリカが、古くからの慣習とか家柄といったヨーロッパ的なるものに訣別して生まれた国であることを、福沢(諭吉)はまだ理解していなかったのかも知れない(79頁)。ポスドクにあぶれた者は非常勤講師で食いつないだり専門とは無関係の仕事についたり、そんな仕事にもつけずそれまでとまったく違う勉強を始めたり、家事手伝いやアルバイトで暮らすことを余儀なくされている(115頁)。 2018/12/31
mayumi
20
管見妄語シリーズ第5弾。時事ネタは2年ぐらい前の話題なのでちょっと古いのですが、相変わらずの藤原節炸裂で面白かったです。「救国の数学者と毒りんご」のお話は興味深かったです。映画にできそう…と思ったら、ベネディクト・カンバーバッチ主演で映画化されてましたね!観てみようかな。2017/08/05
ひよピパパ
14
2022年初読みは藤原正彦の著作となった。本書は2013~2014年に「週刊新潮」で連載されていたエッセイを一書にまとめたもの。時事ネタ(書かれた当時は安倍政権下。アメリカはオバマ政権の時代)も多く、今の状況と比較しながら読むのも一興。印象的だったのは、強大化する中国への懸念がすでに当時から顕在化していたこと。アメリカの中国への対応が政権ごとにかくも違うものかと驚かされた。2022/01/03
まりにゃ
10
大好きなシリーズの第5巻。『はじめに』にあるとおりの「森羅万象の中から、著者自身の見解をにじませる題材を選び、歴史的見解を含む普遍性やユーモアを付加したエッセイ」をこそ、最も私が読みたいものだ。もちろん世界政治経済への痛烈な指摘も、数学者の透徹した視点から来るものだから大歓迎。しつこい皮肉は嫌いなので、それが少ないのも今回は良かった。本書で一番好きなのは、子ども時代に可愛がってもらった隣家の高齢夫妻の話。かつて実在した、こういう誠実で気骨に貫かれた知性をこそ、私たち現代人は知った方が良いと思う。2017/10/24
tnyak
8
管見妄語シリーズ第5弾。全てのメスメディアとは言いませんが、TVでも新聞でも料簡の狭い言説が溢れている今日、日本の文化・伝統、日本人の叡智を粛々と説く藤原氏。大げさかもしれないけれど、私は崇敬の念を抱いています。これからもユーモアをまじえた珠玉のエッセイを書き続けてほしいと思っています。 2017/07/03