内容説明
怪盗ニック・ヴェルヴェットは、きょうも仕事に精を出す。盗みの対象は価値のないもの、誰も盗もうとはしないものに限定されるが、一度引き受ければどんなに困難な依頼もこなすプロ中のプロだ。本書にはニックが日本を訪れる「駐日アメリカ大使の電話機を盗め」や、不慮の事故で骨折しながらも盗みに挑む「感謝祭の七面鳥を盗め」など、雑誌にのみ掲載されたものや本邦初訳のもの、シリーズ愛読者でも初めて読むであろう作品を多数収録した。短編の名手ホック随一の人気キャラクターの全短編を発表順に配して贈る全集第3弾、全14編。/解説=木村仁良
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nemuro
52
とんと海外本とご無沙汰だなぁと気が付きふと眺めた本棚に発見した〈怪盗ニック〉シリーズ。あったのは全6巻のうち第4巻まで。で、2020年12月9日に第1巻、しばし忘れつつも思い出して2021年11月14日には第2巻。そして第3巻の本書。スローながら着実に怪盗ニックの世界を堪能中。全14編。「駐日アメリカ大使の電話機を盗め」でニックが日本を訪れ、「きのうの新聞を盗め」では恋人・グロリアが遂にニックの本当の仕事(政府の仕事ではなかった)を知る。思えば重要な巻だった。更に次巻には女怪盗サンドラが待機中で楽しみ。2022/01/28
たち
20
今回は、とうとうガールフレンドのグロリアに、ニックの正体がバレてしまいます。大ピンチ!と思いきや、グロリアはあっさりと事実を受け入れ、「手数料は2万ドルから2万5千ドルに値上げすべし!」と、かなりしたたか。それからはニックの良き相棒として大活躍します。もともと、私はグロリアが好きだったので、この展開は嬉しいです。それにしても、この二人、13年も一緒に暮らしていたんですね~。2016/07/29
霧島
14
全集第三弾。初訳新訳多数ということで未読作品がほとんどだったが、全14編パターン化された中にも細かいところに捻りが加えられていて、どれも楽しく読めた。相変わらず「どう盗むか」「何故盗ませるか」に加え「誰が殺したか」「どう話が転がっていくか」という部分でも興味を惹かせつつ、それらの謎と解決が30頁の短い尺に収められており、流石短編の名手だと唸らされる。特に面白かった作品は日本を舞台にしたスパイ小説チックな話「駐日アメリカ大使館の電話機を盗め」と一風変わった依頼が意外な形に展開していく「銀行家の灰皿を盗め」。2016/07/04
qoop
11
都合の良い女/単なる背景でしかなかった恋人グロリアが存在感を増していく本巻。価値のないものを盗むという設定ゆえに毎回趣向を凝らしているが、それに加えコンビ芸を見せるようになり、ご存知物の面白さを保ちつつ型を広げる工夫あり。…いやでも、単独行動ではこなせない仕事に挑むための装置として考えたら、やはり都合のいい女なのかなぁ… 本巻ではクライムストーリーの面白みを伝えるかのような〈消防士のヘルメットを盗め〉、パートナーの必要性と最小限の役割を同時に伝える〈感謝祭の七面鳥を盗め〉が印象に残る。2020/02/28
stobe1904
11
鉄板の面白さを持つ怪盗ニックシリーズの3作目。相変わらず粒ぞろいの作品だが、日本を舞台にした「駐日アメリカ大使の電話機を盗め」と、「消防士のヘルメットを盗め」が好み。ニックの稼業がグロリアに発覚したことで、報酬が上がったのもご愛敬。次作も楽しみ。★★★★★2016/10/30