内容説明
ニック・ヴェルヴェットは当代きってのプロの泥棒である。つねに依頼を受けて動く彼が盗むのは、価値のないもの、もしくは誰も盗もうとは思わないものだけ。報酬は一件につき二万ドル。そんな型破りな条件にもかかわらず、彼のもとには依頼が次々に舞い込んでくる。ターゲットはプールの水、おもちゃのネズミ、プロ野球チーム、使い古しのカレンダー等……それらをニックはどうやって盗む? そして依頼者はなぜ盗ませようとする? 短編の名手ホックが創造した唯一無二の怪盗ニック、その全仕事を発表順に配して贈る全集第1弾、全15編収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
100
「ニックは野球にはときおりにしか関心を示さないがーアメリカに住むほとんどの人と同じようにー」ってアメリカ人にとって野球ってそうなの?日本に負けるよ、そりゃ。「もしかしたら、彼はいつも現代のドラゴンと戦うちょっとした騎士なのかもしれない。捜し求めている聖杯がただの金だったとしても、ほかのほとんどの男と何が違うというのだ?」そこまでニックかっこよくはない。2024/04/10
HANA
69
「価値のないもの」だけを盗む怪盗ニック。文庫版全集が出るとは思わなかったので、嬉しい限り。ターゲットとなるのもプールの水や真鍮の看板、カレンダーに回転木馬と変わったものばかり。既読作品が多いが読み返して思った事は、盗み自体は結構力技が多いという印象。強奪やらハイジャックやら。ミステリとしての興味は「価値のないもの」の背後にある真相に大部分が費やされている感じかな。こちらも怪獣とか強引なものもあるけど。そういう意味ではプールの水と音楽が面白く感じれた。何より怪盗という言葉に含まれるわくわく感が堪らないです。2016/06/18
ちょろこ
60
今回の仕事は何?の一冊。怪盗ニックのポリシーは価値のないものを盗むこと。プールの水だの、野球チームだの、はたまた陪審員まで…一見、全く価値のないものをどうやって?なぜにこれを?と、少しずつ気取らず読める短編集。開くたびに今回の仕事は何だろう?とワクワクしている自分に気がついた。依頼人の裏に隠された真意、事情をニックが解き明かすミステリ部分は海外版 杉下右京といったところか。最近の狛犬、つり革盗難事件はきっとニックが…そしてぜひとも真相を解明して欲しい…なんて考えてみると面白い。2016/02/06
kana
52
プールの水、野球チーム、動物園の虎など金銭的価値のないものを専門に扱うプロの泥棒、ニック。最低報酬2万ドルを支払ってまでそんなものを盗めと依頼する人にはだいたい後ろ暗い理由があり、ニックは何度も騙され利用されそうになりながら、明かされない依頼人の真意を先読みし、巧妙に仕事を成し遂げ、きっちり手数料を回収する。その一筋縄ではいかないスリリングな展開と名探偵さながらの爽快な謎解きを数十頁にきっちり収める著者の手腕もニックの盗み同様にプロフェッショナリズムを感じます。隙間時間のちょっとした息抜きに良き読書。2016/09/10
emi
52
個性的な怪盗・ニックに夢中になりました。たっぷり15の泥棒話に、正直ワクワクドキドキが止まりませんでした。依頼を受けてニックが盗むのは、価値のないもの、もしくは誰も盗もうとは思わないものだけ。最初から設定も面白いし、そんなものを一体どうやって?!と気になってしまう。さらに短編だから、分厚いけれど少しずつ読めるし、真相は決して子供騙しなんかじゃない(なんせニックへの報酬は最低2万ドル!)。そしてもっともっと読みたくなってしまうのです。あぁこれは2冊目も読んじゃうな…。ちょっとした冒険気分も味わえる1冊です。2016/04/21