ちくま学芸文庫<br> デカルト入門講義

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ちくま学芸文庫
デカルト入門講義

  • 著者名:冨田恭彦【著】
  • 価格 ¥1,210(本体¥1,100)
  • 筑摩書房(2021/04発売)
  • GWに本を読もう!Kinoppy 電子書籍・電子洋書 全点ポイント30倍キャンペーン(~5/6)
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  • ISBN:9784480099068

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内容説明

科学者であったルネ・デカルトは、自然科学の礎たりえる知識をもとめ、第一哲学=形而上学の再構築に乗り出す。なにひとつ信じられるものがない「懐疑」を出発点に、それでも絶対疑えない原理「我あり」へ、更に「神あり」「物体あり」へと証明をすすめる。本書はその哲学をまず『省察』『哲学の原理』など主著を追ってわかりやすく解説。ついで『世界論』『人間論』を通して、近代哲学の理解に不可欠な自然学的論理を説明する。スピノザ、ロック、バークリ、ライプニッツ、カント、フッサール等々、その後のすべての西洋哲学に強烈な影響力を持ち続けたのは何故か。

目次

はじめに
第1章 デカルトの生涯──一五九六年~一六五○年
誕生
ラ・フレーシュ学院
ポワチエ大学
軍隊──ベークマンとの出会い
神聖ローマ皇帝フェルディナント二世と三○年戦争
フリードリッヒ五世とエリーザベト王女
ノイブルクの炉部屋
三つの夢
『詩人集』と二つの詩
自然科学・第一哲学(形而上学)・方法・道徳
「方法」について──「精神指導の規則」
「方法」について──『方法序説』の場合
デカルトの学問観
とりあえずの道徳
メルセンヌ
デカルトとメルセンヌ
屈折の法則(一つの例)
ベークマンとの決別
『世界論』の公刊の断念
遺稿の出版について
『方法序説』と三試論
「幾何学」のラテン語版
ヘレナと、娘フランシーヌ
『第一哲学についての省察』
『省察』第二版とフランス語版
『哲学の原理』
『哲学の原理』のフランス語版
エリーザベト王女
『情念論』
シャニュとクリスティーナ女王
スウェーデンへ、そして、逝去
第2章 『省察』を読む(Ⅰ)──第一省察~第三省察
「第一哲学」と「形而上学」
デカルトの形而上学と自然学
すべてを疑う(方法的懐疑)
少しでも疑わしいものは偽とみなして排除する
疑いの理由(1)──感覚はときとして欺く
疑いの理由(2)──夢と覚醒の区別が明確ではない
疑いの理由(3)──数学でも間違えたことがある
疑いの理由(4)──欺く神
ハードルが高ければ高いほど
アルキメデスの(支)点
我思う、ゆえに我あり
「考えるもの」としての「心」
蜜訒の話
明証性の規則
「観念」の論理(1)
デカルトの今後の方針
誤りはどこにありうるか
観念の分類──生得観念・外来観念・作為観念
外来観念の考察──似ているか似ていないか
「自然の光」と「自然の衝動」
考察の続き
次の手──観念が表現するもの
「観念」の論理(2)──表現的実在性
もう一つの論理──原因と結果の関係
形相的実在性
観念の原因
観念の別の分類
物体の観念についての考察
物体の観念は私に由来すると考えることができる
神の存在証明
もう一つの、神の存在証明
神は欺く者ではない
第3章 『省察』を読む(Ⅱ)──第四省察~第六省察
神の存在と善なる神
誤謬の原因──知性と意志
神は欺かず、誤謬は意志の制限によって回避できる
物体の観念──その判明な部分
第三の、神の存在証明
最も完全なもの
物体の存在証明へ
想像することと理解することの区別から
感覚・再説
物体の存在証明
物体について知られること
自然によって教えられること
軽率な判断に対して
「誇張された懐疑」の停止
夢と覚醒の区別・再説
第4章 形而上学を支える自然学──物体の本性と観念の論理
『省察』の中の自然学
『哲学の原理』第二部
物体の存在の確かさ
物体の性質
ロックの「一次性質」と「二次性質」の区別の先取り
話を戻して
身体と心の結びつき
物体の本性──重さや固さや色などではなく、延長のみ
真空の否定
原子の否定
物質は限りのない微小部分に分割される
運動の第一原因
慣性の法則
自然学の数学的原理
形而上学の中の自然学
「観念」登場
自然学的基盤
「第二答弁」に付された説明から
『人間論』に見られる「観念」の用法
「観念」の自然学的論理空間
第5章 デカルトの「循環」?──「自然の光」だけを頼りとして
デカルトの学問観・再説
「自然の光」の用法
方法の適用
「自然の光」と「神の恩寵」
「明晰判明」
デカルトの「循環」
「第二反論」での指摘とデカルトの答弁
前提と結論
スキオー系の言葉とノースコー系の言葉
デカルトの答弁
「第四反論」での指摘とデカルトの答弁
第二答弁第四項から
デカルトの言うとおりであるとすれば
クワインの先駆?
明晰判明でないものが支えとなって
第6章 主観主義の伝統と分析哲学の起点──デカルト哲学の射程
デカルトとアウグスティヌス──もう一つ、古くから言われてきたこと
一六三七年に戻って
『神の国』第一一巻第二六章
デカルトの説明
デカルトのネットワーク
デカルトの観念論
すべてを廃棄した上での「我あり」
デカルト的観念論の魅力
すべてを心の側から──主観主義
もともとの「二重存在」構造と主観主義
分析哲学のルーツ
ニーチェとハイデッガー
結びにかえて──フッサールのデカルト評
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

内島菫

19
実在する物体と心の中にある観念としてとらえた物体の二重存在説は、つまりは一即多、多即一ということであり、人間のあり方を人間自身がどうとらえているかということの表れではないかと思う。個人的に、巨大ロボット考察の出発点としてデカルトを選んだのは彼の心身二元論の故であり、その心身二元論はさらに実在論と観念論に支えられていたことが本書によって見えてくる。また、デカルトの循環論とされるものの著者による細かい検討によって、デカルト自身が循環ではないと否定している言い分に特別違和感がないということも確認される。2022/08/18

うえぽん

18
西洋近代哲学の巨人デカルトの思想を入門講義調にまとめられた本。「我思う故に我あり」という観念論と徹底的な物体懐疑から始まり、神の存在の肯定と、自然学を援用した「広がりを持つ物体」の存在の再肯定等を通じ、独自の哲学を牽引し、後世に多大な影響を与えたと評価。数学的に計測可能な大きさと、感覚により人によって異なる形で把握される匂い・色等を峻別して、後者は明晰に把握されないとしたという点は、以前読んだエクスキュルの環世界の立場からすれば、より相対化されてしまうように思える。難解な哲学をとっつき易く解説した良書。2023/09/09

またの名

11
「長い推論を続けていると(私など、短い推論でもそうなのですが、あはは)前提や、それと結論とのつながり方を、忘れてしまうことがありますよね」とデカルトに対する循環論ではとの批判を自虐交じりに検討。近代哲学の大御所をシリーズで解説するスタイルを最近確立した著者による説明は、表現的実在性と形相的実在性といったどっちが何だか混乱して分からなくなる用語を理解できるよう書いてるだけでなく、歴史的背景を押さえるため神聖ローマ帝国に触れたらそれについて基本から解説し、手取り足取りの教育的配慮。分析哲学系からの視点も新鮮。2019/07/27

Bartleby

10
デカルトの哲学には他者がいないという指摘はなるほどと思った。デカルトはあらゆるものを疑った末に、「私」が疑う間は少なくとも疑う「私」は存在しているという明晰判明な事実から出発した。自然科学を根っこで支える形而上学(第一哲学)を再構築するためだ。しかしその論証にはデカルトが他方で研究していた数学・物理学の方法の影響が見られる。科学を支えるものであるはずの形而上学を科学の知見によって構築しようとする矛盾。デカルトが近代科学の父であるゆえんは、そういう意味でもあったのだな。2022/09/11

mstr_kk

7
野田又夫『デカルト』(岩波新書)はとてもよかったけれど、腑に落ちないところもあったので、出たばかりのこの本を読みました。これら2冊はセットで読むのがよさそうです。僕がおかしいと思っていたのは、たとえば、「われ思うゆえにわれあり」が原点だとして、そこから神の存在証明に行くとき、「われあり」以外のことを利用しちゃっているところなんですが、この本はちゃんとそこを批判してくれますし、歴史的なデカルト批判も紹介してくれます。僕がひっかかったいろいろな点は、多くの人が問題としてきた点だとわかり、安心しました。2019/02/28

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