内容説明
米屋の主・十左衛門の葬列に石を投げた少年・修平が公事宿(現代の弁護士事務所)「鯉屋」に連行される。居合わせた人々は質の悪い悪戯だと呆れるが、修平の言動に聡明さを感じた菊太郎は、理由を問い質し、彼を助けようと一計を案ずる……。鯉屋の居候・菊太郎の活躍を人情味豊かに描く、人気時代小説シリーズ第九作。表題作ほか五編収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
onasu
23
数ケ月間をおいて読んでも、あっという間に作品世界に浸ってしまう。 何がそうさせるのかと言えば、短編それぞれの主題や出てくる者の人間味は言うまでもなく、菊太郎と居候している公事宿「鯉屋」の面々との皮肉のぶつけ合い、折々に触れられる京都画壇の絵画、今回はなかったが菊太郎の剣さばき等など。 特に「鯉屋」の面々とのやり取りでは、彼らの方にも遠慮がなくなり、時に菊太郎が降参することも。この辺り、楽しんで描かれているのかと思うと、その無理のない綴りは流石と言う他ない。 急いて続編を手に取らぬよう、注意せねば。2016/01/11
ベルるるる
3
毎回、結末がはっきりしないうちに終わってしまうのが残念。面白いんだけど、何か読後感がすっきりしない。シリーズの最初のころは、物語の結末がはっきりしなくても、次の話で、前話の主人公達のその後が出てきてホッとしたものだった。2014/09/21
kazu@十五夜読書会
3
公事宿事件書留帳シリーズ9巻。① 闇の掟 ② 木戸の椿 ③ 拷問蔵 ④ 奈落のみず ⑤ 背中の髑髏 ⑥ ひとでなし ⑦ にたり地蔵 ⑧ 恵比寿町火事 ⑨悪い棺 ⑩ 釈迦の女 ⑪ 無頼の絵師 ⑫ 比丘尼茶碗 ⑬ 雨女 ⑭ 世間の辻 ⑮ 女衒の供養 ⑯ 千本雨傘 ⑰ 遠い椿 ⑱ 奇妙な賽銭 ⑲ 血は欲の色2012/11/07
nemu
2
菊太郎と出会う子供はいつも賢い気がする。この調子で行くと鯉屋が丁稚だらけになりそう(笑)?2020/01/17
くぅ~ねる
2
面白いシリーズだから読み終わっては勿体ないと思い、読むのを中断していたが再開。やっぱり面白いなぁ。 時代小説は江戸を舞台にしたものが多いがこの作品は京都が舞台。当然、話す言葉も京言葉。1巻目では慣れなかった言葉遣いも9巻目ともなると、むしろ心地好さを感じる。今で云う《弁護士事務所》のような《公事宿》に持ち込まれる様々な出来事にも感心。今も昔も諍いの種は変わらないんだな。自称・居候の田村菊太郎と公事宿・鯉屋の面々が見事な手腕で解決していくストーリー。これからも楽しみだ。2014/01/03