内容説明
今はもう忘れられた、魔法医師の物語――。
太古の昔、医術と魔術とは、同一のものであった。
今や人類は、かつて魔術と医術とが一つであったことをすっかりと忘れてしまっていた。しかし、この世には未だ医術のみで癒せぬ病が存在する。
それは、伝承の中で、吸血鬼、狼男、食人鬼などと語られる化け物の類い、魔術を用いねば癒せぬ病――すなわち〈妖病〉が。故に古代の知恵、魔術と医術とが一体となった知恵を、未だ脈々と伝え続ける者たちがいる。
すなわち――〈魔法医師〉が。
魔法医師の少女・クリミアは自身が幼い頃に行った魔法医術の影響で、重大な妖病を患った幼なじみのヴィクターを治療するため、共に旅を続けていた。その目的は、ヴィクターの病を治せるだけの力をもった霊石《ガマエ》を集めること。
その旅の中で、二人は数多の病人を治療していく。
ときに魔法医師を異端と迫害する教会と戦いながら。
ときに病人を魔物と称する人々と戦いながら。
そして、病そのものと、戦いながら――。
『王子降臨』『楽園追放 mission.0』などで活躍中の手代木正太郎が奇妙で流麗な筆致を踊らせた最新作(2015年8月発表作品)。
イラストは、気鋭のイラストレーター・ニリツ!!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まりも
42
「王子降臨」の作者の新作は魔法医師のクリミアと、ある病に罹ってしまった助手のヴィクター二人の旅を描いた物語。王子は登場しないけど、あっさりと人が殺されていく情け容赦の無さは流石と言ったところですね。魔女狩り時代の西洋を舞台にしながら、バトルは忍法帳スタイルだったりと謎の混ぜ合わせも健在で中々良かったと思います。所々違和感を感じる部分もありましたが、作者の強みを十分に出せていた1冊だったんじゃないでしょうか。次回作も期待してますよ。2015/08/20
よっち
34
魔法医師として医療に従事しながら、重大な妖病を患った幼馴染ヴィクターを治療するため、共に旅を続けるクリミアたちの物語。吸血鬼病に侵された教会の腐敗に立ち向かう神父サミュエルの事情に巻き込まれ、わりと情け容赦なく登場人物たちが死んでゆくストーリー展開ですが、そんな状況でも救える命は何とか救おうとするクリミアと、その正義感に振り回されつつも想いに応えようとするヴィクターの奮闘ぶりが肝なのかなと。二人がやり遂げた末に訪れたのはあまり報われないシリアスな現実でしたが、これはこれでこの物語らしい結末だと思いました。2015/08/19
ナカショー
30
かなり面白かった。魔術医師として患者を治す活動の傍ら、幼馴染みを救う手立てを探すために、共に旅をしていくクリミアとヴィクターの話。病気の仕組みがよく考えられていて読んでて分かりやすかったです。かなり好みな世界観とストーリーなので、是非とも続刊を出してほしいですね。2015/09/04
かんけー
22
多少荒削りな印象は残るが良い作品。魔法医師クリミア、不思議な鍼を使って難病患者を救っていた。相棒(^.^)ヴィクター難病を背負った看護師...と言えば聞こえは良いが現状クリミアの用心棒だね♪登場人物の行動原理が予想の斜めに行ってるので先読みは?であった。クリミアの信念には脱帽するのだが。サミュエルも頑固だよね~(^_^;)ジャクリーヌの身上を想い、最後に救って欲しいと。敵の存在も如何にも(笑)極悪そうで、吸血鬼の始祖とは成る程確かに面白い。ノエル単なる雑魚キャラになってるし、戦闘での表現の仕方は2015/08/28
T.Y.
21
魔法医師の少女クリミアと、その助手を務める看護師の青年ヴィクター。教会から異端として睨まれつつ旅を続ける二人はこの度、吸血鬼化(病)の蔓延する街で事件に遭遇…。講談調に芝居がかった語りに看護流柔術といった弾けた設定、山田風太郎忍法帖ばりの怪人バトルはセンス全開。信仰上の理由で治療を拒む患者の問題を描き通したのも好印象。ただ近代文明と中性的な異端審問を取り合わせた独自の世界観は味の内として、教会のスタンスにはやや違和感も。かくも実効性を持ったものを切り捨て続けられるものだろうか。2015/08/20