内容説明
「お前を殺す前にわたしはお前に接吻をした、わたしの最期もぜひともお前への接吻で」
――男の激しい愛が悪党に操られて激しさのゆえに悲しく錯乱する。若く美しい妻をめとり、幸福の絶頂であった勇猛高潔なムーア人の将軍オセローは、旗手イアーゴの奸計により、副官と妻との間の不義を疑い、激しい嫉妬に囚われ、次第に正気を失っていく。シェイクスピア四大悲劇のひとつ、純愛悲劇の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miki
12
イアーゴの残虐さ冷血さ残忍さ、ひたすらの悪人ぶりに震撼。人を唆し、欺き、扇動し、憎きオセロ―のみならず、邪魔となれば自分の妻すら自らの手で地獄へ突きおとそうとする姿に微塵の後悔も反省もないなんて。鬼!自分の手を汚さない狡猾さを持ち、相手の弱みと隙をつく長ける嗅覚、洞察力に優れた天才。これは確かに、世界文学史上最も魅力的な悪人だと思う。父権制の時代、ただ愛を全うするにはデズデモーナは純粋すぎたし、悪魔の言葉に惑わされてしまったオセロ―はやはりどこかに自分の容姿や立場に不安定を抱いてたのだろう。2013/07/03
syota
4
純粋で高潔な精神が小さなきっかけから疑心暗鬼に陥り、どんどん深みにはまってしまう。オセローが次第に正常な判断力を失っていく様子、そしてクライマックスの乱心ぶり、心の闇を描ききる作者の力量はすさまじいばかり。だが、「リア王」ほどには心にずしんと響かない。主役オセローが偉大な将軍の割にはあまりにも単純、無防備で、簡単にだまされてしまい、同情しにくいからか。私の脳内ランキングでは、「ハムレット」より上で「リア王」よりは下。2015/01/22
左手爆弾
2
イアーゴの策略の巧妙さ、恐ろしさ、それにあっさりとはまってしまう武人オセロー。基本的にはイアーゴの手のひらの上で全てが進んでいき、最後の最後でエミリアの命をかけた告発で主要人物がみな退場し舞台は終わる。こう考えるとやはりエミリアという存在は謎である。それほど出番は多くないものの、重要な役回りであり、物語を展開させる軸のようにも見える。解説でわざわざ取り扱ったのも納得が出来る。本としては、文字が大きく読みやすく、原文のリズムを活かすような訳であり、解説には訳者のこだわりと苦労が現れている。2012/07/12
あきつぐ
1
さすが詩劇。とてもテンポよく読めました。背景描写などなくともそれらをイメージさせる文章にグッと惹きこまれます。ドロドロの愛憎劇ですがとても哀しい物語です。2012/03/01
にき
0
(図)2013/07/05