内容説明
拝郷(はいごう)鏡三郎は、もと勘定方勤めで順風満帆の役人人生……だったのだが、いささかの仔細あって、クビとなった。かつての上司の尽力あって、今は八丁堀近くの“大番屋”の元締として再就職を果す。大番屋とは、江戸の仮牢(かりろう)兼調所(しらべどころ)。持ち込まれる相談ごとは、町人の釈放嘆願から天下の将軍さまの悩みごとまで。ハテ、どうしたものか? と悩むうち、強運と顔の広さ、いや鏡三郎の能力なのか? いつしか見事解決に至る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kei302
55
幕府の、今で言うところの財務省「エリート官僚」拝郷鏡三郎、組織の都合でトカゲのしっぽ切りの憂き目に遭い、大番屋(私設の仮牢兼調所)の元締に…。仮牢兼調所でもある大番屋の鏡三郎のもとには、きょうも町方から武士まで、あらゆる相談事が持ち込まれる。困り事に知恵を貸したり、たまたま解決したり、元上役たちに振り回されたり。仕事もプライベートも盛りだくさん。越後十日町の縮問屋の甚兵衛さんの処遇が宙に浮いたままで上巻が終わる。甚兵衛さん、いい味出してます。下巻が楽しみ。 2021/12/14
ひかつば@呑ん読会堪能中
12
とぼけた味というんでしょうか、なんとも言えない可笑しさがこみあげてくる作品ですね。老中の政争のとばっちりでお役御免となり大番屋の元締で糊口を凌ぐ中年の御家人が主人公。このおっさん居眠り紋蔵同様に強運の持ち主で、難事が何となく解決してゆくところがなんともいい。ヤモメの鏡三郎とその娘のチトひねくれた恋の行方も楽しみだ。2013/06/11
ジュール
10
縮尻鏡三郎シリーズ、再読開始。これは一番最初。鏡三郎がしくじった経緯がわかる。「象牙の印籠」、「甚兵衛さんの手妻」佐藤さんの作品によくあるが、状況が行き詰って、どうにもならない時にふとした偶然から鮮やかに解決。読んでて気持ちが良い。2020/05/09
タツ フカガワ
10
勘定方に勤める拝郷鏡三郎はわけあって罷免され、いまは町奉行所の仮牢を兼ねる大番屋の元締めに。しかしその人望から相談事が引きも切らない。町人はもとより、ときの老中までも元上司を通して頼んでくるあたりは、物書同心の紋蔵さんを想起。鏡三郎の自宅の地主である借金まみれの風変わりな旗本津田家で何か起こりそうだと思いつつ下巻へ突入です。2019/03/06
Hironobu
7
シリーズ初読。やっぱり佐藤雅美さんはおもしろい。将来を嘱望されていた勘定方の役人だった鏡三郎。些細あってクビとなる。今は大番屋の元締めとなり、町人から奉行まで、様々な相談や問題を解決していく。2017/03/06