内容説明
そういえば、あの本のこと、なんにも知らずに生きてきた。
一度は読みたいと思いながらも手に取らなかったり、途中で挫折してしまったりした古今東西の「名著」を25分間×4回=100分で読み解きます。各界の第一線で活躍する講師がわかりやすく解説。年譜や図版、脚注なども掲載し、奥深くて深遠な「名著の世界」をひもときます。
■ご注意ください■
※NHKテキスト電子版では権利処理の都合上、一部コンテンツやコーナーを掲載していない場合があります。ご了承ください。
■今月のテーマ
近未来のアメリカを舞台に、女性の性と生殖が強制的に管理された社会を描いた『侍女の物語』とその続編『誓願』。アメリカ、そして世界中で右傾化や全体主義的傾向が強まるなか、この予見的な小説を読み解き、真の自由、抑圧的な体制や手法への抵抗など、「今そこにある危機」について考える。
■講師:鴻巣友季子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
おたま
72
6月のNHK「100分de名著」が「アトウッド『侍女の物語』『誓願』」だったので、番組の視聴と同時並行で読んでいった。両作ともにしばらく前に読了しているため、その全体を俯瞰的に振り返ることができ深く理解するのに役立った。解説を『誓願』の翻訳者である鴻巣友季子さんが行っており、細かな点にもよく眼のゆきとどいた、丁寧な解説だった。特に、ディストピアとユートピアとの関わりについて、アトウッドが両方の小説で用いた語りの戦略について、時代への予言性というものがよく分かった。アトウッドの他の作品も読みたくなった。2025/06/26
もえ
26
番組を録画して『侍女の物語』と『誓願』を読了後に視聴。『誓願』の翻訳者である鴻巣友季子さんは、作者のマーガレット・アトウッドのインタビューもしたことがある方。アトウッド独特のユーモアや鋭い視点を理解しており、二冊の副読本としても優れている。番組の中で村田沙耶香さんの言葉も紹介されていた。彼女は年上の女性から「あなたは安産型ね」と言われる度に「産む性として見張られている」と違和感を覚えたそうだ。過去に「女性は産む機械」と失言した大臣もいたが、女性の持つ違和感を村田沙耶香さんやアトウッドの作品は体現している。2025/07/07
かふ
22
『侍女の物語』がオーウェル『1984』の批評から書かれたこと。それはオーウェル『1984』だけでく、世に言う「ファム・ファタル」文学が男の視線から悪女=聖女を描いているように『1984』に登場するジュリアはアホ女のように描かれているという。それをジュリアの視点から物語を語って『侍女の物語』となっていくのだが、ダークファンタジーとして描いたものがディストピア文学になっていくのは、それが過去の物語ではなく未来の物語として読まれるからだった。ユートピア(ファンタジー)がディストピア世界になる構造を明らかにする。2025/06/18
石橋陽子
18
80年代には受精した卵はその瞬間に人格を持つという考えが打ち出される。アメリカでは、不妊治療をする女性を単なる支給提供者や孵卵器のように考える風潮があった。アトウッドはバックラッシュのありようや、モラルマジョリティという保守派のキリスト教組織が勢力を伸ばしていることを感じ取り『侍女の物語』を書き出したそう。近未来を予言する小説として評価されており、本編を読んでみようと思う。ユートピアが行き過ぎるとこうなるかもしれないという世界。アトウッドによればそれがディストピア。2025/06/10
コニコ@共楽
17
6月に「100分de名著」でテキストになりました。ディストピアの代表作ともいっていいアトウッドのこの作品、待ってましたという感じ。『侍女の物語』だけでなく、続編『誓願』まで取り上げてくれたのは待っていた甲斐があったというもの。面白かったのは、鴻巣さんがいうディストピア洗脳三原則。①国民の婚姻・生殖・子育てへの介入と管理。②知と言語の抑制。③文化・芸術・学術への弾圧。なんと今起こっている現実を感じます。聖書を勝手に解釈している社会は宗教と政治が分離していず、その危うさも感じさせます。2025/09/26
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