内容説明
いつまでも涙が止まらない――。
銀座のとある路地の先、円筒形のポストのすぐそばに佇む文房具店・四宝堂。創業は天保五年、地下には古い活版印刷機まであるという知る人ぞ知る名店だ。
店を一人で切り盛りするのは、どこかミステリアスな青年・宝田硯。硯のもとには今日も様々な悩みを抱えたお客が訪れる――。
両親に代わり育ててくれた祖母へ感謝の気持ちを伝えられずにいる青年に、どうしても今日のうちに退職願を書かなければならないという女性など。
困りごとを抱えた人々の心が、思い出の文房具と店主の言葉でじんわり解きほぐされていく。
いつまでも涙が止まらない、心あたたまる物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kazuko Ohta
180
なにせ一年半前まではガラケーすら持ったことがなく、弟の闘病をきっかけにようやくスマホを買った私は、いまだに電話よりも手紙を書くほうが気分的に楽です。特に文房具に思い入れがあるわけではないけれど、字は万年筆で書きたいし、ノートも絵葉書も常備アイテム。文房具店が舞台という小説は結構ありますが、本作は文房具店のオーナーが客に出すお菓子や、オーナー行きつけの喫茶店、あるいは客が勤める店の一品が登場する合わせ技が駆使されていて飽きません。特に好きだったのは最終章のメモパッド。わが家のメモパッドも勿論ずっとロディア。2023/11/06
はにこ
174
ハードな読書が続いた時に読みたいような本。文房具を求めにやってきたお客様に寄り添う店主。スマホが発達して手紙を書くことがめっきり少なくなったけど、紙から心を込めて選ぶのって素敵だし、もらったら嬉しいよね。嫌なヤツもほとんど出てこないので気持ちよく読み進めることができた。学生たちの恋の話が甘酸っぱくて良かったな。2024/05/31
Kokopelli
172
ちょいと用事があって読了まで時間がかかったが、読めばスイスイ進む。銀座の路地にある個人経営の文房具屋「四宝堂」が主な舞台。そこの三十代半ばの独身男性店主宝田硯が主人公なのであるが、短編集であるこの本は、各話のエピソードの中心人物の主観の思いや言葉で描かれている。そして各話ともそれぞれが胸にジーンと来る話で、電車で読んでいて落涙の不覚は数度・・・この文房具屋の2階には一度訪れてみたい。良いのは好きなシステム手帳やロディアの#12なども登場し、やはりイイものは良いなぁと思う。次のIIも来たので、続けて読もう。2024/03/01
貴
170
万年筆をよく使っています、マイスターシュテュック の一番細いものです。会議や打ち合わせの時は、熱心にメモを取っているふりをしていますが、眠いので手を動かしているだけです。八割方は、ほぼ落書きですいつも、速記のようにして、ごまかしていますが、あまりにも雑な字なので自分でも読めず後でとても苦労しま。! ! せっかくの心温まる話が台無しですが。2024/05/26
涼
165
http://naym1.cocolog-nifty.com/tetsuya/2023/03/post-e16623.html 収録作は、【万年筆】【システム手帳】【大学ノート】【絵葉書】【メモパッド】と、いずれも魅力的なタイトルが並びます。2023/03/31