内容説明
数々の架空戦記はやがて現実の開戦と重なっていく――。異色の日本精神史。
収録作『黒船の世紀』(1993年6月小学館刊、1998年9月文春文庫、2011年6月中公文庫上下巻、2017年11月角川ソフィア文庫)は、近代日本を突き動かしてきた「ガイアツ」の本質に迫る、異色の日本精神史。黒船に始まる「ガイアツ」の歴史の中で日本人は何を考えてきたのか。
日露戦争後、太平洋を挟んだ日米両国間に対抗意識が芽生え、数々の「日米未来戦記」が誕生。戦力分析に基づく現実的なシミュレーションから、奮起を促す精神論、SF的発想の物語まで、その数500点以上。架空の戦記は、願望や世論を反映し、やがて現実の開戦と重なっていく。「日米未来戦記」の詳細な分析から、日本人の精神史、日米関係の裏面史を描き出した野心的巨編。
本書には巻末に文庫にはない、アレックス・カー氏との対話「この国を蝕む安心という病」(『プレジデント』2002年7月29日号初出)、青木彰氏との対話「司馬遼太郎を継ぐということ」(『本の窓』2002年11月号初出)、阿川弘之氏との対話「百五十年の視座」(『文芸ポスト』2002年秋号初出)を収録。また、猪瀬による関連記事「『外圧』の裏面史 日米未来戦記」(『読売新聞』1993年8月10日初出)、「なぜ『民営化』を主張するのか」(『東京新聞』8月6日初出)のほか、伊藤隆氏による解説「二十世紀を越えて続く『物語』」(文春文庫版)、単行本刊行時に各紙誌に掲載された、野口武彦、高橋英夫、草野厚各氏による書評を収める。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yukihiro Fujii
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ペリーの黒船来航から第二次大戦の終戦までの物語。 日本が鎖国の平和な時代から黒船という外圧を受けて、外国との関係が開かれていく・・・ そして、国際社会の中で日米の大戦へと推移していく歴史的な動きとなっていく。 日米未来戦記というシミュレーション小説の存在自体、非常に面白かった。 歴史はこれからの未来を照らす鏡だろうか・・・?2013/02/27
choku_tn
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日本や日本人が外国と向き合う時に横たわる、芽生える意識の根幹、根源を考察。加えて20世紀の日米で著された「未来戦記」を紐解き、両国の相剋を新たな視点から分析する。物事の背中から見て核心を突いた一冊。「歴史トリビア」的な事象が本質に繋がっていくことも分かる。