内容説明
日本のなかば以上を所領した平家が、いま寸土も失って、水鳥の如く波間に漂う。思えば、入道清盛逝きて、わずか4年後の悲運である。最後の夢を彦島のとりでに託して、一門の船団は西へ西へと向う。史上名高い那須余一の扇の的、義経の弓流しなど、源氏がわの武勇をたたえる挿話のみが多い屋島の合戦――。著者は眼を転じて、追われる平家の厳島(いつくしま)祈願に込められた、惻々たる心情に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kiyoshi Utsugi
41
この巻では、屋島の合戦から平家が更に西に向かって落ち延びていき、平知盛がいる彦島で合流。 その平家を追ってきた源義経を総大将とする源氏の軍と最後の一戦をすべく、安徳天皇をはじめ平家側の全員が乗船するまでを描いています。 多分、この13巻と14巻が、この新・平家物語の最大のクライマックスではないかと思います。 滅んでゆく平家の姿を見事に描いてますね。まさに諸行無常だなあと思わずにはいられない。 屋島の戦いの跡地、壇ノ浦の戦いの跡地には行ったことがあるだけに、感情移入できる。2022/08/06
ちゃいろ子
40
屋島 平家のあまりの無策ぶりで 辛くも勝利するが 義経は素直に喜べない。 平家の中の幼帝や母徳子、また女性や老人の姿を見て 自分の母である常磐のことを想ってしまうから。 あの者たちへ対しても弓を向けるのかと悶々としてしまう。 平家方でも時忠親子は何とか安徳天皇や徳子を助けようと画策する。義経がまだ流浪していた頃に時忠が助けたことなど懐かしいエピソードも。 知盛も冷静に戦局を見極め、頼りない宗盛を助けるが、、。 登場人物がとにかくいつも多いので各々のエピソードが読み応え抜群。そして壇之浦へ2021/12/18
金吾
35
一の谷から屋島の一連の戦いでは総領の器量について考えさせられます。優柔不断でどのようにして一族を導いていくのかを示せない指揮官はやはりダメだろうなと感じます。いよいよラストスパートの雰囲気になってきました。2023/04/16
シュラフ
32
「おもしろい。おもしろいほど、事が食い違ってくる。不運とは、こうしたものか・・・」と教盛が嘆くほどに平家はツキにもヒトにも見放されていく。不運のどん底の人間の心情を吐露するすごいセリフである。そして屋島を追われた平家一門は彦島を目指すのだが、途中で厳島神社を参拝する。もはや前途のない残された平家一門の最後の饗宴の場面がなんともやるせない。夫・清盛の死からわずか四年。自分の子や孫が次々と討たれて、もはや一門の破滅を待つばかりの二位ノ尼の心中はいかなるものであったろう。後世のわれらの胸をもうち、涙を誘う。2017/05/04
崩紫サロメ
14
屋島から壇ノ浦へ。落ち延びていく平家が厳島に参拝する場面を挿入しており、清盛がいた頃の平家が思い起こされ、しみじみと哀しくなる。また、総大将の宗盛について、多分源平盛衰記にある「清盛の子ではなく橋の下で拾われた子」という説が採用されている。というか、ここで初めて出てきたので宗盛も読者もショックを受ける。そんなこと今明かさなくても、と可哀想になる。次巻が壇ノ浦の戦いで、その前に各々親族との別れを惜しむ場面が何ともつらい。2019/12/16