内容説明
打倒平家の旗のもとに鎌倉を進発した源氏軍と意気あがらぬまま東下した維盛(これもり)の頼朝征討軍。両軍は富士川をはさんで対峙する。“水鳥の羽音”で敗走した平家には、著者一流の解釈がある。――黄瀬川の陣で、末弟義経と初の対面をした頼朝。いよいよ活気づく源氏勢に手を焼く平家は、腹背に敵を受けた。木曽義仲の蜂起は平家一門の夢を劈(つんざ)き、北陸路もまた修羅の天地であった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kiyoshi Utsugi
38
吉川英治の「新・平家物語(八)」を読了しました。 この第8巻では、源頼朝と平家方の合戦で、水鳥が羽ばたく羽音を源氏の大軍と間違えて平家軍が敗走したことで知られる富士川の戦いから平清盛が亡くなるまでを描いています。 全部で十六巻なんですが、その半分になる8巻で平清盛が亡くなるとは、ちょっと意外でした。 残りの半分は滅亡に向かっていく平家を描くことになるのか… となると主役は源頼朝、義経に移っていくことになるんでしょうね。2021/09/09
シュラフ
34
鎌倉では頼朝がたち、木曽では義仲がたつ。東方が不穏となる中、平家の大黒柱である清盛が死ぬ。享年64歳。吉川英司は、「どのみち、世に、栄々盛々など、ありえない。咲いた花はかならず散る。栄枯盛衰が自然なすがたなのだ。まして、自分の亡い後、平家がなお弥栄えてゆけるはずがない・・・」と清盛に述懐させている。どうしようもない極貧生活から栄華を極めるまでにのぼりつめた清盛にとって、自分の人生を省みると感慨深いものがあっただろう。清盛の死は、平家の凋落を暗示するような大きな痛手。越後では、義仲が奇計によって、国を支配。2017/04/27
金吾
28
○富士川の戦い、清盛の死そして北陸もきな臭くなるという平家にとっては大変な状態になっています。一方源氏はお家芸である一族相克がすでに始まりました。源平の特色がはっきり出ており面白いです。2023/04/10
崩紫サロメ
22
この巻、ラストは頼朝が浮気して政子と夫婦喧嘩しつつ惚気てる感じのところで終わったけど、それまでにいろいろありすぎた。何といっても清盛の死。明らかに作者は清盛像を描き直したいという意気込みを持っていただけに、しばらく虚脱感が。亡くなる少し前に時子に「……が、楽しかったなぁ」と言っているところで、ちょっと涙出そうになった。義仲が本格的に活動を始める巻でもあり、義経が恋する乙女のように頼朝を慕いつつも馬を引かされたり、いろいろある巻でもあった。2019/10/15
Mzo
12
巨星墜つ。位人臣を極めた平清盛もついに没した。彼だけは盛者必衰の理を真に理解していた、というのは有り得る気がする。とにかく人物が大きかった。三国志における曹操のように、嫌われもするが誰もが偉大さを認めていたのでしょうね。さて、これで新・平家物語も折り返し。ここからは平家の凋落が切々と語られるのかな。ただ春の夜の夢の如し。2012/05/08