読書という航海の本棚＞読書 - 紀伊國屋書店ウェブストア｜オンライン書店

和書児童文学論岩波現代文庫

邦題は、英語版の原著の副題を日本語に訳…

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タグ児童文学、読書

電子版あり

謳い文句に「待望の復刊」とあるが、もともと本書は単純に『読書会』の表題で、徳間書店から2007年に刊行されていて、再刊の際にＳＦの二文字を冠したもの。これで、山田正紀と恩田陸が、自らのＳＦ作品の読書体験を語り合うという内容が鮮明になった。
　若い読者には、読むべき昭和のＳＦの名作を知る機会になると思うが、この２名の作家の中間に生まれた私にとっては、自分自身の青春の読書への回顧となった。
　半村良の『石の血脈』と『産霊山秘録』は、ハルキ文庫で大人になって再読したし（残念ながら二冊とも早川書房の初版本は手元にない）、アシモフの『鋼鉄都市』と『はだかの太陽』は、50代になってから英語で読み直した。沼正三の『家畜人ヤプー』は、山田正紀が、「古本屋で買ったハードカバーで読んだ」と後顧しているが、その都市出版社版を私も同じように神保町で購入し、今も書斎の奥に鎮座している。過去の読書になってしまっているが、今回、1999年に完全版として５分冊で出版されている（幻冬舎アウトロー文庫）ことが分かり、改めて購入する計画をたてた。
　長編だけでなく、スティーブン・キングの短編「黒いスーツの男」が、O・ヘンリー賞を受賞したとの言及があり、うかつにも初めて知ったのだが、あわてて書棚から原著の短編集を取り出したら、20年前に読んでいたことが分かった。反省も含めて、読み直すことにした。
　さらに、ロバート・ネイサンのファンタジー『ジェニーの肖像』にも立ち返ることができて、活字をとおして見たニューヨークのセントラル・パークの情景が蘇った。
　読書体験は、重ねれば重ねるほど、時の密度を濃くすることを改めて実感した次第。

タグ SF、読書

電子版あり

和書目と眼差しのオブセッショントーキングヘッズ叢書

叢書名の「トーキングヘッズ」は和製英語…

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タグ目、窃視、読書

電子版あり

和書新・ジャンル別洋書ベスト５００プラス

終活準備のために購入した。読むことが困…

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タグ終活、読書計画、英書

電子版あり

和書忘れる読書ＰＨＰ新書

メディアアーティストという21世紀が似…

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タグ読書、unlearn

和書図書館愛書家の楽園（新装版）

ちょうど２年前の１月に読んだThe　L…

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タグ読書の醍醐味

和雑誌ＢＲＵＴＵＳ（ブルータス）（２０２３年１月１５日号）

雑誌Brutusの読書特集は、2016…

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タグ読書

和書読書の森へ本の道しるべＮＨＫテキスト　ＮＨＫ趣味どきっ！　２０２２年１２月－２０２

店頭でみつけ躊躇なく購入。「はじめに」…

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タグ読書

和書遠心力 - 冒険者たちのコスモロジー

本書は、究極の観光案内だ。表題の『遠心…

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タグ読書の重み、冒険

和書人魚の嘆き・魔術師中公文庫

「魔術師」には大いに魅せられた。谷崎は…

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「魔術師」には大いに魅せられた。谷崎は「メスメリズム」と言う表現を使っている。動物の体内磁気を研究していた独の医師、メスメルに由来することばで、催眠術の意味になった。魔術師は物語に登場する謎の人物だが、読者は、谷崎潤一郎という小説の魔術師に、この短編小説を読み始めた段階で、意識を操れることになる。
　舞台は浅草のような場所。十二階がそびえていた時代だ。時は初夏の夕べ。若い恋人同士がそぞろ歩きで、うす暗い場所にある魔術師の小屋へ足を踏み入れることになる。
　そこで目にするのは、人が魔術師によって物や動物に変身してしまう奇術だった。そして、彼等自身も、半羊神（パン）に姿を変えてしまう。
　単純な展開の怪奇・幻想小説だが、奥は深い。主人公達が目撃する園芸術に対するポーの「アルンハイムの領地」と「ランダアの小屋」との対比とベックリンが描いた「死の島」の印象との相似は、意味深長だ。
　読み終えた後は、乱歩の「パノラマ島奇談」や「押絵と旅する男」を思い出した。さらに、関東大震災前の浅草の禍々しさからは、荒俣宏の『帝都物語』と小野不由美の『東亰異聞』の世界へ戻ることになる。
　短時間の読書にもかかわらず、意識は、過去へ戻ると同時に、新たに似たような怪異譚を探すために疼き始めた。この恍惚から覚めたくないのだ。
　作者の想像によるまやかしの物語。しかし、「幻想」は決して現実にないことではない。精神分析医の河合隼雄が言うように「幻想は現実に関係している」（『中空構造日本の深層』中公文庫）のだ。谷崎が紡いだ悪夢が根を伸ばし、文学・芸術作品と無意識の中で絡んでいく。そして、気がつけば生い茂る書物の森が意識できるようになり、そこを夢見心地で逍遥している自分自身と出会うことになる。これこそが、読書が魔術たる所以だろう。

タグ魔術たる読書

洋書アルベルト・マングェル著／好奇心に導かれたわが読書遍歴 Curiosity

表題のcuriosityは大好なことば…

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表題のcuriosityは大好なことばの一つだ。2012年の到着以降火星の表面で調査活動を行っているrover（探査機）にも同じ名前がついている。「好奇心」と訳されることが多いが、読書の姿勢を考えると「探求心」のほうが妥当かもしれない。
　目次だけ見ても分からないが、本書は、『神曲』が描く、地獄、煉獄、天国の場面に合わせ、関連する事象について、著者が多年にわたる読書歴で培った知識をもとに、見解を述べていくという体裁だ。
　従って、ダンテの他、案内人である古代ローマの詩人ウェルギリウス（英語表記はVirgil）とダンテの永遠の恋人ベアトリーチェも登場する。『神曲』は高校時代に現代教養文庫『神曲物語』を読んだだけで、きちんとした翻訳を読んでいない。今回、思いがけない形で、『神曲』の暗く、深く、そして高い世界を見られたのは大きな収穫だった。改めて、この世界文学の至宝を原典にちかい形で読みたくなった。
　Curiosityで著者が語るものは、人生の意義に係る事柄である。例えば、こども時代の「少年小説」と「少女小説」という区別の思い出が「性の平等性」の考察へと昇華し、フランス革命の陰で処刑された劇作家オランプ・ド・グージュの主張が紹介される。彼女は「人権宣言」の仏語表記では、女性が見えないという理由で抗議運動を始めたのだ。
　また、拳銃を手にした記憶が、火薬という殺戮兵器の発明、そして原爆を完成させた天才物理学者オッペンハイマーの苦悩へと拡張していく。科学者としての好奇心が、神の領域へ足を踏み入れ、その後の世界を一変させてしまったという悲劇。冒頭で著者が確認していたcuriosityの語源から見えてくる、肯定的と否定的なに二重の意味が、ここで顕著になった。
　その他、「ことば」、「場所」、「名前」、「動物」、「金銭」等、身近な話題に対し、著者の思いがつづられるなか、随所に歴史的人物や文学作品からの引用が散りばめられている。ダンテが創造した世界をめぐる形式で、著者の意識に構築された図書館へ招待されるのだ。
　読書の重みを熟知した著者からは、人が人として生きていくためには、数多の書物を読み、「なぜ」というような正解がない問いに真摯に向かい合うことが重要であることを改めて悟らされた。

タグ読書の重み読書、探求心

洋書 The Maximum Security Book Club : Reading Literature in a Men's Prison

『刑務所の読書クラブ』が翻訳の題名。原…

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『刑務所の読書クラブ』が翻訳の題名。原書のmaximum　securityの意味は最高度の安全対策という意味だ。安全といってもsafetyとは異なりsecurityにはいつ攻撃されるか分からないという緊張感が漂う。この読書会開催の場所が男性専用の刑務所だからだ。参加者は重大な罪を犯した囚人たちである。そこへ女性教授が乗り込んでいく。
　著者が訪問したのは米国メリーランド州のジェサップにあるJessup　Correctional　Institution（矯正施設）である。服役後の社会復帰を考えると実用書の方が有益かと思うが、彼女は異なった選択をした。副題に「文学を読む」とあるとおり、著者が選んだのは読み継がれてきた名作10編だった。
　ところが、課題図書は美しく感動するような小説ではない。シェークスピア『マクベス』、スティーブンソン『ジキル博士とハイド氏』、ナバコフ『ロリータ』等の10作品。反社会的で人間の心の葛藤を描いた重い物語ばかりである。最初に取り上げられたのがコンラッドの『闇の奥』（Heart　Of　Darkness）。前菜無しで始まった感がある。
　心理学者でもある著者は、文学と言う虚構の世界をとおし、読み手である囚人たちの深層心理に入り込もうとしたような印象をもった。本書では、2年半に及んだこの読書会の記録と本の内容に関する犯罪者との問答が描かれる。
　正解また結論がない意見交換をとおして、著者は文学の持つ深淵な影響力を明らかにした。囚人たちの気づきに涙がでた。「本を読むのは魔法のようだ。苦痛はなく、希望がある。今まで以上に生きてるって感じられる。」（p65抜粋）
　６冊が既読の作品だったので、参加者になったつもりで読み進めることができた。個人的に信じている「読者生存」という考えが、的を大きく外していないと確信できたことは大きな収穫だった。
　刑務所という閉鎖空間、しかも常時監視されているという異様な雰囲気の中、活字の海に溺れそうになりながら、読み手たちは、人生の闇の奥にheart（命の鼓動、愛情、関心）を見出したに違いない。巻末には、囚人たちが自ら選んだ今後取り上げたい作品が紹介されている。（実現はしなかったのは残念）
　この読書クラブは終わってしまったが、私の中では続いているようだ。時々、書棚から著者が問いかけてくるような気がする。

タグ読書の重み

洋書アルベルト・マングェル『図書館―愛書家の楽園』（原書） The Library at Night

『図書館　愛書家の楽園』が翻訳の題名だ…

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『図書館　愛書家の楽園』が翻訳の題名だ。読書をこよなく愛する著者が、公共の図書館の歴史、構造、文化的意義、そして教育的役割等を、名著からの引用も散りばめ語っている。また、私的な書斎のあるべき姿も自身の経験から言及している。章立ても整理されていて読みやすい。見事な並列だ。
　私は、a　voracious　reader　という表現が好きだ。むさぼり喰うように本を読む人間を意味する。美食家のような上品さはないが、飽くなき読書欲が前面に出るのが気にいっている。自分もそうでありたいと思い続けてきた。本を買う行為は、「狩る」という認識で、手に入れた書物を自宅の狭い空間に閉じ込め、気が向いたら頁を開く。本書でもインターネットより図書館がいい旨の説明があるが、ウェブは、私にとっては「餌場」である。そこでは、利便性が高いが故に自分で探す力が衰える。長居すればするほど、逃れられなくなる。なぜならば、ウェブは「蜘蛛の巣」だからだ。自由に一冊の本を手にする幸せを改めてかみしめた。
　本書の原題は『夜の図書館』。この妖しい雰囲気で購入を決めた。閲覧者のいない時間帯である。この違和感を消すために、邦題では単に「図書館」としたのだろうか。最初の印象とは異なり、勇気づけられる「啓蒙」の書だった。
　本書を読めば「夜」が著者自身の理想的な読書時間だということが分かる。当然、「光」が必要だ。書斎を包む闇の中に浮かび上が選ばれた書籍と読み手の対照が幻想的だ。読書と思索に必要な「静寂」。著者はこれを日没後に見出したのだ。
　また、「夜」は、不幸にも愚かな侵略者や統治者によって、燃やされたり、廃棄されたりした夥しい数の書物が被った悲劇の寓意かもしれない。闇夜での静かな読書が、失われた過去の書籍への哀悼になるのかもしれない。
　今までの粗野な読書生活を反省する機会にもなった。読書への姿勢、あるいは書物の取り扱い等、「愛書家」になるための神髄を著者に諭されたので、より真摯な読書生活を心がけたいと思う。しかしながら、狭いながらも、私にとっての書斎は「朝・昼・夜の図書館」にしたいと思う。

タグ読書の重み

和書本の神話学岩波現代文庫

この岩波現代文庫は2014年１月の発行…

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この岩波現代文庫は2014年１月の発行だが、本書の最初の出版は1971年7月まで遡る。山口昌男の著作は、当時の私の視野に入るような内容ではなかった。2004年の７月にようやく『知の祝祭』を読んだだけだ。高山宏の著述から著者の多岐にわたる業績を知るようになった。ようやく本書に辿り着き、感無量であるばかりか、今までの拙い読書体験を大いに補完できる情報と助言に満ちていることが実感できた。
　一つは『金枝篇』のフレーザーについて、現地調査をしなかった研究者という悪評を非難しつつ、「隠れた現実を照射する新しいモデルを構築するためのイメージを蒐集した」と擁護している。この論法は私の思いを的確に表現してくれて胸がすく思いだ。
　もう一つは、著者が推薦する物語作家として紹介されたデンマーク人カレン・ブリクセン。初めて聞く名前だと思った。しかしながら、英語で書く時にはアイザック・ディネーセンというペンネームを使っていたことが分かった。この事実で、記憶は1985年に遡及する。アメリカ映画『愛と哀しみの果て』が日本でヒットした年だ。映画は見なかったが、その原作であるOut　of　Africaを書店で手に取った記憶が蘇った。この小説の作者こそ、カレン・ブリクセンだったのだ。
　山口昌男は、この女流作家について「想像力の欠如は人々が存在することを妨げている」という引用で説明し、彼女が物語で表現する感受性を称賛している。おそらく、36年前にOut　of　Africa　を読んだとしても、単なる映画の原作程度の読後感で終わっていただろう。改めて、このケニアの自然と人々の回想文学を読みたくなった。
　その他の記載内容も、半世紀たっても色あせてはいない。むしろ、当時の知的動向を知るうえでは重要と思う。1970年と言えば、本格的に読書を始めてから２年目。令和になり、残された年月は少なくなり始めたが、本書のような豊潤な知の書物を紐解くと、「読書の神様」から大いに鼓舞されるような気になる。

タグ読書の重み

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