内容説明
そういえば、あの本のこと、なんにも知らずに生きてきた。
一度は読みたいと思いながらも手に取らなかったり、途中で挫折してしまったりした古今東西の「名著」を25分間×4回=100分で読み解きます。各界の第一線で活躍する講師がわかりやすく解説。年譜や図版、脚注なども掲載し、奥深くて深遠な「名著の世界」をひもときます。
■ご注意ください■
※NHKテキスト電子版では権利処理の都合上、一部コンテンツやコーナーを掲載していない場合があります。ご了承ください。
■今月のテーマ
希代のストーリーテラー
江戸時代の医家で繰り広げられる嫁姑争いを描いた『華岡青洲の妻』、経済成長期のさなかに高齢化の問題をあぶり出した『恍惚の人』、日常を生きる人々の機微を鮮やかに映し出した『青い壺』を題材に、昭和を代表する女性作家、有吉佐和子の持つユーモアとリアリティ、俯瞰する視点を読み解く。
■講師:ソコロワ山下聖美
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜長月🌙新潮部
54
今回取り上げられている3冊と巻末の「もう一冊の名著」:女二人のニューギニアはすべて既読ですが自分の読みの浅さを思い知ることになりました。もちろんソコロワ教授は時代背景や関連文献まで読んでの解説ですから詳しいのは当たり前ですが視点の違いもあり、多いに気付きがありました。2025/01/24
れみ
44
NHK-Eテレ「100分de名著」2024年12月のテキスト。昭和に活躍した女性作家・有吉佐和子さんの「華岡青洲の妻」「恍惚の人」「青い壺」を解説。有吉さんのお名前はもちろん作品名も知ってはいたけど読んだことはなく、これをきっかけに3冊を読むことに(「青い壺」は読んでる途中)。番組ではソコロワ山下聖美さんの解説や原田ひ香さん・伊集院さんや阿部さんのお話が面白いうえ、堀内敬子さんの朗読がまた素晴らしくて、毎回楽しかった。2025/01/05
ぐうぐう
31
有吉佐和子を取り上げるにあたって、このラインナップには少し不満もあったのだが(『華岡青洲の妻』はわかるが、『青い壺』の代わりに『香華』であったり『和宮様御留』といった作品のほうが有吉の凄さを伝えられるのではないかと思ったからだ)、番組を観て、と同時にこのテキストを読んで、納得に変わった。『恍惚の人』は現代の介護問題を先取りしているし、『青い壺』が再びベストセラーになっていることでもわかるように、現代人の琴線に触れるテーマで有吉作品の普遍性がラインナップからは理解できる。(つづく)2025/01/08
もえ
25
有吉佐和子の『華岡青洲の妻』と『恍惚の人』と『青い壺』を、日大教授のソコロワ山下聖美さんの解説で放送された。このうち『華岡青洲の妻』は亡き母に勧められて学生の頃に読んだが、歳を重ねた今は嫁と姑の心情が痛いほどわかる気がする。『恍惚の人』は私の子供の頃には流行語にもなったと記憶しているが、認知症と介護の問題は現代にも通じていて今こそ読むべき本かもしれない。『青い壺』は原田ひ香さんの「こんな小説を書くのが私の夢です」という帯の言葉で新たに18万部も売れたそうだ。普通の幸福が描かれた連作短編集を読んでみたい。2025/01/09
あきあかね
17
「歴史に名を残さなかったとしても、自分の生きた証を残すべく一生懸命に生き抜いた女たちー。その姿は、墓の有無や大きさとは無関係に尊いのです。」 『華岡青洲の妻』の嫁と姑の相克、『恍惚の人』の壮絶な介護。センセーショナルな主題に隠れがちだが、有吉佐和子の作品は人間の尊厳を描き出す。『恍惚の人』について、認知症によってこれまでの自分を失っていく老人と翻弄される家族を描いた作品という印象を持っていたが、老いてもなお尊厳を失わない人間の姿に光を当てようと有吉佐和子は考えていたという。⇒2024/12/31