内容説明
全体主義の思想的根源にプラトンを見いだしたポパーは,「閉じた社会」を擁護するその哲学に徹底的な弾劾を加えたうえで,こう述べる.「人間でありつづけようと欲するならば,ただひとつの道,開かれた社会への道しか存在しない.われわれは未知なるもの,不確実なるもの,危ういもののなかに進んでいかねばならない.」(全四冊)
目次
第一巻 プラトンの呪縛(下)
プラトンの政治綱領(承前)
第七章 指導者原理
第八章 王としてふるまう哲学者
第九章 唯美主義,完全主義,ユートピア主義
プラトンの攻撃の同時代史的背景
第一〇章 開かれた社会とその敵
付録
Ⅰ プラトンと幾何学(一九五七年)
Ⅱ 『テアイテトス』の日付問題(一九六一年)
Ⅲ ある批判者への返答(一九六一年)
Ⅳ 遅まきながら(一九六五年)
注
本書が日の目を見るまで(フーベルト・キーゼヴェッター)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイトKATE
35
前巻で全体主義思想の祖としてプラトン批判を展開したカール・ポパー。本巻でも容赦ないプラトン批判を論じている。ポパーがプラトンの許せない思想として、変化を嫌い体制を維持するために、自分の影響を承認する者を後継者にする思想は、権力の腐敗の原因だと切り捨てている。また、プラトンの思想は、唯美主義、ユートピア主義、集団主義であり、自分の理想の実現のために、相容れないものを排除していることにポパーは危険性を見抜いていた。ポパーのプラトン批判は苛烈であるが、その考察は全体主義への抵抗の足掛かりになっている。2024/01/31
春ドーナツ
16
全巻揃うまで「LEGO®71374」の「NES」の上に一年近い時日、積んでおいたのだけれど、本書を読む前にやっておけばよかったと思うことがある。塩野七生さんの「ギリシア人の物語」を再読したり、「饗宴」しか紐解いたことがないので、ほかのテクストにも挑戦する、とか。各巻200ページ近い注釈があるし、カール・ポパー氏の著作も岩波文庫の新刊を毎月買うという習慣がなかったら、そもそも出会いもなく、2400年前の話だけれど、今日的な主題であり、「あとの祭り」と嘆くことなく、真摯に耳を傾けながら読み進めている。第二巻へ2023/11/16
Ex libris 毒餃子
16
プラトンの思想背景から全体主義の原型をみてとる。哲人王による統治を閉じられた社会と断じる。『国家』読まないとなあ。2023/04/30
A.Sakurai
7
プラトンはなぜ全体主義的な政治哲学を作ったのか.その背景の説明が面白い.アテネが海外交易や対外進出をするにつれ,伝統的社会から個人が社会の中で位置を争う「開かれた社会」になった.旧支配者層にとっては問題だ.支配者層であったプラトンは問題解決のために安定した社会を構想した.厳格な階級区分,支配階級の維持,武力の独占,革新の阻止,自給自足という方策は安定を旨とし,変化を拒否するためのもの.これは江戸幕府の政策に通じる.安定を最優先にすると同じ発想になるのだろうか.でも変化は必ずやってくるので崩れざるを得ない.2023/08/05
ポルターガイスト
4
新課程が始まってから全国の高校で一般化されつつある「探究学習」というの,ポパーの話を聞いてる限り,かなり筋が悪いのではないかと思う。「探究」という語感そのものに不変の本質を取り出そうとする傾向性が内在されている。だから全国の高校で行われているこの手の学習にはそらぞらしい「主体的(実質的には権力者への忖度)・対話的(実質的には権力の確認作業)で深い学び(意味のない修飾語)」が蔓延しているのではないか。文科省がいま進めている改革は筆者が批判するユートピア工学ではないのか。2023/08/03
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