内容説明
歴史とは意味をもった必然的な自己展開であるとするヒストリシズムは,マルクスをつうじて強い影響力を有した.その非合理主義を徹底的に脱構築するポパーは,合理主義の立て直しを模索し,「批判的合理主義」を導く.歴史に意味はない,だがわれわれ自身こそが意味を与えるべきなのだ.懇切な解説,索引を付す.全四冊.
目次
第二巻 にせ予言者(下) ――ヘーゲル,マルクスそして追随者
マルクスの予言(承前)
第二〇章 資本主義とその運命
第二一章 予言の評価
マルクスの倫理
第二二章 ヒストリシズムの道徳論
余 波
第二三章 知識社会学
第二四章 神託まがいの哲学と理性への反逆
結 論
第二五章 歴史に意味はあるか
付 録
Ⅰ 事実,規準そして真理.相対主義へのさらなる批判(一九六一年)
Ⅱ シュヴァルツシルトのマルクス本についての論評(一九六五年)
注
訳者解説
訳者あとがき
人名索引
事項索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイトKATE
27
カール・ポパーは、プラトン、ヘーゲル、マルクスの思想は全体主義であると批判した。三人に共通しているのが、自分の思想が歴史の必然というヒストリシズムとして予言したことである。ポパーにとってヒストリシズムは、本人の願望であり根拠も整合性もない非合理主義であった。非合理主義が危険なのは、建設的でない感情や情熱を暴力も使って訴え民主主義を破壊するからである。民主主義を全体主義から守るためには、何が正しく間違えているのか分析し考察する思考「批判的合理主義」を持つことが大事だとポパーは訴えている。2024/02/29
春ドーナツ
16
訳者あとがきでも触れられていたけれど、ポパー氏の文章を読んでいて、こんがらがることはなく、哲学書なのに、内容がこんなに頭の中にするすると入ってきて、私は大丈夫なのかと疑った。さらに不思議だったのは、訳者の情報によれば、思想界において左右両極端に解釈されてきたことである。訳者は文章の「わかりやすさ」にその一因があるのではないかと、ポパー氏の研究者として感慨深く語っておられる。テクストは読者の手に渡った途端、読者のものになる。思い込みに陥らないよう、平明に読むことはできるのだろうか。主観の呪縛。出口はあるか?2023/11/23
Ex libris 毒餃子
13
最終章から読んだ方が全体のイメージをつかみやすい。歴史は現代を生きる我々が意味付けすることに意義があり、それ自体に意味を持たせることは危険であることを主張しています。イデア論から始まり史的唯物論に至る歴史解釈を否定するポパー。良本。2023/11/22
ポルターガイスト
6
「人を愛するとは,その人を幸せにしたいと思うことである。しかし,すべての政治的理想のなかで,人びとを幸せにしたいという願望くらい,危険きわまりないものはないだろう。こうした願望は,不可避的に…われわれの〈より高い〉価値秩序を強いる試みを,したがって言ってみればかれらの魂を救済する試みをみちびくであろう。…しかし…地上に天国を打ち立てようとする試みは,いつでも地獄を生み出す。…助けを必要とする人を助けるのは義務であるが,他の人を幸せにするのは義務ではない。」(続く)2023/10/29
A.Sakurai
4
本書執筆の動機は全体主義への批判だが,全体主義に陥る原因を突き詰める点に主張の力点がある.それは「歴史に学ぶことで社会のメカニズム(歴史法則)が導き出されて,より良き対応ができる」という考え方(ヒストリシズム)にある.直感的に真実っぽいし,分かりやすく,受け入れられやすい.しかし,記録されている歴史はごく一部の権力抗争=いわば犯罪史で,そこから何を読み取るかも恣意的だ.環境は変わるので観測した歴史の傾向と潮流が明日も続くどうかはわからない.実は非合理的なのだ.系統的説明を選好する自分にとっても留意すべき点2025/08/26




