内容説明
パヴェーゼが自死の前年にみずから編んだ作品集「鶏が鳴くまえに」(1949)の本邦初の全訳.反ファシズムの廉でイタリア南端に流刑された経験をもとに書かれ,この時まで秘め置かれていた最初の長篇小説『流刑』.ナチ・ファッショと抵抗組織の間をさまよう主人公を描いた戦後の象徴主義的な作品『丘の中の家』を収める.
目次
流 刑
丘の中の家
解説 『鶏が鳴くまえに』(一九四八年刊)
〔一〕チェーザレ・パヴェーゼの前半生
〔二〕長篇第一作「流刑」(一九三八年十一月二十七日─一九三九年四月十六日)
〔三〕十年後の長篇「丘の中の家」(一九四七年九月十一日─一九四八年二月四日)
地 図
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うぼん
1
詩人パヴェーゼの乾いた散文が好きだ。ファッショ時代の殺伐とした非情世界と詩的で繊細な情景描写には違和感がなく、それが妙にリアルで惹き込まれる。とはいえ河島先生の翻訳の癖、「よいのだよ」「よいのよ」といった口語化されない会話文には都度つど引っ掛かった。60年代当時の日本語でも「いいんだよ」「いいのよ」が一般的な翻訳だったはずだ。音便化されない格助詞の「の」が辛い。また、伊語特有のフォーマル話法(敬語)の翻訳も、貴族なら「なさる」でも良いと思うが、30〜40年代の庶民会話なら丁寧語程度の言い換えでいいと思う。2023/05/10
Adore
0
『丘の中の家』について 『流刑』に引き続きパヴェーゼの自伝的要素を含む物語でありこの主人公に共通するのはお互いに行動的自由が制限されていることに気づく。 彼は丘に自らの孤独を求めて住むが、ついにドイツ兵に名前を知られ家まで迫ったことにより自由に通りを歩くことができず教会に身を潜めその後は故郷に帰るために検問を逃れようと丘から丘へ転々と移動しやっとの想いで辿り着く。 森の中で幼少期の自分を取り出した時、もう一人の実態を伴った自分が待ちかねたよう現れる 「ぼくたちはふたりとも独りのぼくたちだった」p143