内容説明
真夏の工場駐車場で絞殺された元女性歌手。発表前の歌謡曲「そのとき」の盗作を巡る八年前の殺人事件の目撃者であったことから、出所したばかりの犯人・沖圭一郎に容疑が。しかし沖は、鉄壁のアリバイを隠し、あえて脆弱な嘘で自らを冤罪を課そうとする。登場人物の奇妙な行動の謎がすべて一曲の歌詞へと収束していく、逆説的な二重アリバイの離れ業。作家生活二十年目の野心作! ドキュメント風の冒頭部から、落涙必至の結末まで、謎と不運に翻弄されながら一つの信念を貫く魂の遍歴。超技巧のミステリ。(トクマの特選!)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だるま
18
有栖川さんがお薦めする笹沢左保ミステリ傑作選。もう第9弾。有栖川さんが関わっている作品は出来るだけ読むつもりでいて、このシリーズにも手を出しているが、今作は久々に面白かった。女性が殺され、色々な証拠や証言から容疑者の男が浮上する。刑事が訪ねると男は2重のアリバイを主張するけど、それが破られた途端に自殺。事件は終わったと思えたが、生前に男が何も言っていなかった人物がアリバイを証言して事態は一転する。という捻ったアリバイ崩しの作品で、嘘をついたまま死んだ男の心情が切ない。犯人当てとしては弱いが、満足は出来た。2023/02/15
やまだん
6
50点。元女性歌手のバーの経営者兼ママが殺害される。かつて、この女性の証言で逮捕され、8年間服役していた沖という元作詞家が疑われる。前半はアリバイ崩し。トリックとも言えない陳腐なアリバイ工作はあっさり見破られる。しかし、容疑者である沖には本当はアリバイがあった。なぜ、本当のアリバイを主張せず、偽のアリバイを騙ったのか?解説で、有栖川有栖は、作中では捜査陣が翻弄され、読者も欺いている。トリックを何度も屈折させて、不思議な絵を描いたようなミステリと評しているが、そこまでは感じない。読みやすいが、意外性はない。2023/05/20
しゅー
5
★★三幕構成の一幕目は、ありがちなアリバイ崩し。初版当初は、こういうミステリ全盛だったんだろうな。作者も明らかに分かっていてパロディしてる。油断がならないのは、そんな中にも伏線の数々が。ん?と思う違和感が解決編まであとをひく。有栖川有栖推薦が、そんな安直な謎解きで終わるわけもなく二幕目でガラッと事件の様相が変わる。殺人の手口そのものではなくて事件関係者の言動に謎の焦点を持ってくる手際が巧い。容疑者の「二重」のアリバイの意味は?通俗的なメロドラマをサービスしつつの本格ミステリとしての冴えがさすがプロの仕事。2023/05/23
UPMR
2
佳作。推薦文では挑戦的な二段構えの構成とミスリードの巧みさをうたっていたが、全然そんなことはなく普通に見え見えの真相。だが物語としての面白さはそこそこあって、悲劇の構図としてはベタとはいえ、ある登場人物の悲痛さがラストにリフレインされるような感情の訴え方は上手いと思う。2023/02/13
ゆきゆき
0
殺人事件の犯人と目された容疑者が逃亡の末に自殺。事件は解決に思えたが、疑念を抱いた刑事によって再捜査が始まる。話の構成は著者の一作目『招かれざる客』を彷彿とさせるが、今作では死んだ容疑者が生前の鉄壁のアリバイを隠し、自らが疑われるように振る舞っていたという点がユニーク。派手なトリックがあるわけではないが、幾重にも絡まった人物相関が解きほぐされていく毎に真相が明らかになる過程はなかなか楽しめた。2023/09/18
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