内容説明
従来の『知恵の七柱』は著者自身が原稿を25%ほど削った「簡約版」だった。今回、J.ウィルソンが編集した「完全版」を刊行。ロレンスが描こうとしたアラビアでの戦いの記録の全貌がわかる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Miyoshi Hirotaka
26
帝国主義が猛威を奮った20世紀初頭、多民族を抱えるトルコ帝国は多様さ故に衰退。領域内には帝国転覆を狙う結社が存在。第一次世界大戦の勃発は国際世論を気にせずにこのような輩を一掃する絶好の機会と映った。一方、アラブがトルコに対して反乱を起こせば、英国はドイツと戦いながらトルコも打倒できるだろうと考えるものがいた。知恵の七柱とは、旧約聖書の箴言に由来する言葉。浅はかさを捨て分別を得ること。最初、アラブというアイデンティティはなかった。共通の苦難が与えられたことで階級、境遇、信条の違いを越え、徐々に形づくられた。2017/08/22
ぽん教授(非実在系)
5
アラブ人は一人一人は有能だが、束になると統率が取れず一気に弱体化してしまう。それでもアラブ人をしてトルコ軍を出し抜かなくてはならない。以上の難題を、イギリス人的経験論チックなタッチで一つ一つ追っていく。苦労人ロレンスの観察力の冷徹さに息を飲む。ファイサルが一番有能であることを見抜くところは人事の鑑である。2016/04/15