内容説明
この葬儀場では、奇蹟が起きる。
夫の五年にわたる闘病生活を支え、死別から二年の歳月をかけて書き上げた「3+1回泣ける」お葬式小説。
大学生の清水美空は、東京スカイツリーの近くにある葬儀場「坂東会館」でアルバイトをしている。坂東会館には、僧侶の里見と組んで、訳ありの葬儀ばかり担当する漆原という男性スタッフがいた。漆原は、美空に里見と同様の“ある能力”があることに目を付け、自分の担当する葬儀を手伝うよう命じる。漆原は美空をはじめとするスタッフには毒舌だが、亡くなった人と、遺族の思いを繋ごうと心を尽くす葬祭ディレクターだった。
「決して希望のない仕事ではないのです。大切なご家族を失くし、大変な状況に置かれたご遺族が、初めに接するのが我々です。一緒になってそのお気持ちを受け止め、区切りとなる儀式を行って、一歩先へと進むお手伝いをする、やりがいのある仕事でもあるのです」--本文より
※この作品は単行本版『ほどなく、お別れです』として配信されていた作品の文庫本版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
223
『結局はね、生きている人の心の中の問題なのですよ。どう死を認めるか。どう諦めるか。ご遺族の気持ちに区切りがつくことで、たいていは死者も納得するものです』。『東京スカイツリーのすぐ近く』の葬儀社で働く美空。そんな美空には『あまり口外することではないが私にはちょっとした能力がある。”気”に敏感なのだ』という力の存在が隠されていました。葬儀社の”お仕事小説”の側面も垣間見せるこの作品。ほんのり漂うファンタジーの香りに心地よく涙できるこの作品。「ほどなく、お別れです」という言葉に思いを馳せる素晴らしい作品でした。2024/04/21
Karl Heintz Schneider
106
なぜもっと早く読まなかったんだろう。この本のことはずっと前から知っていたのに。感動の物語に涙が止まらなかった。大学生の美空が知人の紹介で何も考えずに始めたバイトは葬儀場・坂東会館。第二話では5歳で命を落とした女の子の魂と出逢う。母親と離れたくないと泣く女の子を導いたのは。その結末を読み、涙、涙、涙。「大切なご家族を失くし、大変な状況に置かれたご遺族が初めに接するのが我々です。」大切な人を亡くし悲しみばかりが先に立って他のことは何も考えられなくなる遺族に代わって円滑に葬儀を進行してくれる葬儀社の方々に感謝。2022/09/23
いこ
98
主人公美空は、葬儀場「坂東会館」でバイトをしている大学生。美空は、他人の感情を人より敏感に感じ取ったり、その場に残された思念を感じる能力を持つ。美空の上司は、自殺や事故といった「訳あり」の葬儀ばかりを担当している漆原。この漆原と美空が組むことで、想いを遺して逝った故人の想いを汲み、遺族へ伝えてゆく。全四話各話にちょっとした謎解きの要素があること、また美空以上の能力を持つ僧侶の里見も魅力的。人は誰しも、身近な人を見送らなければならない。そんな時、悲しみの中にいる皆にこの坂東会館があったら、と願ってやまない。2022/09/23
やも
97
自死や妊婦、子どもとの死別が出てきてかなり重たいんだけど、少し苦手意識のあるスピリチュアルな話も出てくるんだけど、とても優しい話で何度も目が潤んだ。残された側は心の落とし所を見つけるのは苦労するもの。葬儀をするのは生きている人のため、とはよく言ったものだ。誰もが経験する死別の冷たさを少しだけ掬い上げてくれるような話。また、葬儀場を舞台にしたお仕事小説でもある。主人公の美空がいい子で応援したいし、上司の漆原の仕事っぷりもかっこいい。読み終えたあとは、もう会えない人達を想いながら、今隣りにいる命を抱きしめた。2023/06/11
itica
82
葬儀場で働く美空が見つめる、故人と残された遺族の想い。そこには表立って語られることのないドラマがある。小さな子や若い人の早すぎる死には涙を堪えようもない。しかし、どうだろう。読み終えてみれば思いの外、すっきりしている。美空の先輩やその友人の僧侶、そして美空のきめ細やかな心配りに、私の屈託も故人の心残りも共に昇華してしまったようだ。とても良い話だった。続編も読みたい。 2022/10/12
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