内容説明
夫は妻の仕事をよく知らずに結婚。ある日、妻が薔薇を手に町を歩く姿を目撃し尾行する。秘密に気づいた時、夫は……(「薔薇配達人」)。妻は笑顔の優しい夫の早世を悲しんだ。死の間際に会いに来ると言ったが……(「花あらし」)。男は若い頃に交際した女と出張で再会。旅先の遊びだったが、女の秘めたる激情に震撼し……(「爪のあと」)。ありふれた日常の風景の裏に隠された妖しく不気味な謎、幻想、恐怖。読むごとに生と死が隣り合わせであることを思い知らされ、ぞくりとさせられる。短編の名手が放つ戦慄のミステリー11編。
目次
薔薇配達人
花あらし
犬を飼う女
白い蟹
女系家族
初詣で
土に還る
愛犬
爪のあと
二人の妻を愛した男
迷路
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
88
阿刀田さんの短編アンソロジーです。11の作品どれもがすでに過去の短編集に収められているものですがこのようにまた新たに集めていただくとすでに読んだとはいうものの新鮮さがありました。また結構怖い話があったりして阿刀田さんの魅力が集まっています。楽しめました。ただ今後も新しい作品を発表してもらいたいですね。2021/11/29
優希
39
面白かったです。人間の裏に隠れた不気味な謎をあからさまに描いていました。妖しくも不気味な味わいが鮮やかで、まるでミステリー短編集のようでした。2024/04/20
JKD
13
どの話もちょっとした隠し事があり、これが恐怖であったり、切ないことだったりする。静かに語りかけるような文体で抑揚が少ない印象だが、一作読み終える度に軽いため息が出てしまうほどその雰囲気にのめり込んでしまう。ラストの「迷路」はただただ恐ろしいだけでした。2021/12/11
小梅さん。
13
傑作短編集ということで、既読作品ばかりなのだけど、やっぱり阿刀田作品はいい。 こういう、日常の隣りにあるちょっとした怖さとか、ぞくっとする感じに没入。 ま、「爪のあと」の男性は、つらっと何してやがるって感じで好きになれないけど。こいつが痛い目に合うオチがほしkったw 2021/11/30
ろこぽん
9
この短編集はすべて暗い雰囲気。 「土に還る」がすごく好き。人はどこから来て、どこに還っていくのか。。。妙に説得力がある。お父さんも、旅先で出会った島崎さんも、仏様になったような気がする。 女系家族はどこかに今でもありそう!2022/06/27