内容説明
ついに作者が登場し、主人公と哲学問答。
前巻で描かれた、アキレスとアキレスの馬による「トロイ戦争の原因」に関する考察は本巻でも延々と続き、一向に出口が見えない。
と、そこに白い馬が現れ、ようやく物語は動き出す――かと思いきや、突然「作者特別回」が始まり、『別れる理由』という小説そのものについての考察がなされる。
しかし、主人公・前田永造が作者に「ねえ、小説家」と電話で語りかけ哲学問答を始めるなど、物語は再び混沌の世界に――。
文芸誌「群像」に150回にわたって連載された、小島信夫“執念の大作”の第5巻。当巻には第101話から第125話までを収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
でろり~ん
1
著者がこの作品を書き始めたのが53歳で、この巻を書いている頃には60を過ぎて、色々考えることもにも変化が出てきたんでしょうね。時代としても日本はバブルを醸成する右肩上がりの絶頂期ですし、兵隊さんだった著者はポップカルチャーに翻弄されている、国としての空気感も出したかったのかもしれないですね。不倫に内包された不能という問題に、アキレスまで巻き込んで展開してきて、収集の付け方として小説の製作側の話を持ち出してきたわけですが、それってポリフォニーってことで片付けられるものじゃないですよね。さてこの先、結論ある?2020/01/08
アレカヤシ
1
永造がのんでいたのはやっぱり、モルヒネだったのか?この物語はモルヒネをのんだ彼が病院のベッドの上で見ている夢だったのか? 24頁にとうとう作者(私)が出てきて、この本の後半から作者と永造とのやりとりに入り、ますます面白くなってきた。だけど本当は何が書かれているのか、作者が何を表現しようとしているのか、自分にはよくわからないまま。(本などというものは、ほとんどその真意はつかめぬものだ。それが分っているからヒントをあたえてもいるのだ。こちらのいうことがどうして分るものか。分るのは所詮本人だけだからな)P2462020/01/05