内容説明
両親を事故で失った高坂哲史は、妹とともに定食屋「てしをや」を継ぐことに。ところが料理ができない哲史は、妹に罵られてばかり。ふと立ち寄った神社で、「いっそ誰かに体を乗っ取ってもらって、料理を教えてほしい」と愚痴をこぼしたところ、なんと神様が現れて、魂を憑依させられてしまった。料理には誰かの想いがこもっていることを実感する、読んで心が温まる一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムーミン
139
サイン本キャンペーンに当選していただいた本です。ありがとうございました。この定食屋さんに行きたくなりましたし、自分で調理してみたくもなりました。兄姉の会話、神様との会話、お客さんとのやりとりもリズム良く、笑いと涙、どちらも体験できるお奨め作品です。2022/05/05
おしゃべりメガネ
124
インスタで見かけて手にとった作品です。五編からなる連作集で、とにかくお腹がグーグー鳴ってしまうこと間違いなしです。両親が不慮の事故により、突然他界し、急遽両親の定食屋を継ぐことになった「哲史」と「志穂」の兄妹二人は何かと些細なコトでケンカしながらも、なんとかやりくりしています。妹「志穂」は元々料理の腕前だけではなく、接客も問題ないのですが、兄「哲史」が何かと問題で。そんな自分の不甲斐なさを感じてか、近くの神社へ神頼みに行きますが、そこからがこの物語の真骨頂です。人情と食の温もりがじんわりと伝わります。2023/01/22
CABIN
99
交通事故で突然亡くなった両親の後を継いで、脱サラして妹の志穂と定食屋を営むことになった哲史。しかし料理は全くの素人。ある日、志穂に怒られて店を飛び出し、行った神社で「料理が上手になりたい」と願掛けすると、ちょっと変わった神様が出てきて…この世に未練を残したまま亡くなった人の魂とフュージョン?!日々の生活で乾いた心を癒すのにぴったりな本。哲史のお客様に掛ける言葉が心に響きます。また仲の良い兄妹関係が羨ましく感じました。登場人物(霊魂)が作る料理に纏わる物語がとても感動的で、最後まで涙が止りませんでした。2022/05/02
となりのトウシロウ
94
コミカルな文章でライトな感じなのですが、油断するとグッと込み上げてくるものが溢れ出てしまいます。両親が事故で急逝し、残された定食屋「てしをや」を兄妹で継いでいくことになるのだが、料理のできない兄哲史は妹の志穂に怒られてばかり。ふと立ち寄った神社で愚痴をこぼしたら、神様が現れて、この世に未練がある魂が哲史に憑依して、食べさせたい相手に料理を振る舞うという話。義母が嫁に冷や飯と豚汁を振る舞う話が一番ツンときてしまった。願いの糸を結びつけるという少し強引な感じがあるものの、そこは目をつぶろう。2022/05/22
のんき
92
これは良かったです。料理も美味しそう。食事のマナーも勉強になりました、シンプルなたまごかけご飯でも人を感動することができるなんてすごいって思いました。哲史に魂を憑依して、哲史と一緒にお料理で未練を晴らすところは、優しくて、あたたかいストーリーで泣けましたよ。哲史の家族も大好き。この店で食べたくなっちゃったあ。好きとか、ありがとうとか、やっぱり伝えたいことは伝えなきゃな、相手が生きているうちにね。2018/05/12