内容説明
「自殺した彼女の人生を代わりに生きています」――滔々と壮絶な体験を語る作家志望の女。傷害事件にまで発展した気まぐれの作り話。芸人が体験した3つの謎と符合する実際の陰惨な話。息を吐くように嘘をつき、偽りに偽りを重ねた不実な人々は、やがて虚妄で邪悪な世界に巻き取られていく……。人の語る「真実」とは、その真贋の証明がどれほど難しいか。真実と虚偽のあわいに生じた怪異譚を99話収録した現代怪談第9弾!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
144
岩井志麻子さんの実話現代怪談噺集の9冊目ですね。本書の話はとにかく短い!2頁×99話+あとがきも2頁できっちりびっしり文字が書き込まれて頭から尾まで餡子が詰まった鯛焼きみたいに思う存分に楽しめますね。唯惜しむらくはやはりあまりにも駆け足で突っ走るので物語にコクがなく読んだ尻から記憶から消えて行くのが難点でしょうね。それから理屈や人情だけで割り切れない不可解な話が多くてとまどいを覚える事が多々ありますが、結局は人間も人生もそれ程に単純ではない事の証でしょうね。実際の所は本当の話は一体幾つあるのでしょうかね。2019/12/23
アン
65
この『現代百物語』シリーズも9冊目なんですね。1話2Pで99話。全て2Pでおさめる筆力は流石でした。怖すぎる怪談というよりも、日常にふっと訪れた不思議体験、ともすれば勘違い?気のせい?と思ってしまうようなものもあるので読みやすかったです。幽霊よりも怪談を語ってる人たちの方が怖かったり、怪奇現象を体験した人の方が悪人ぽかったりと生きてる人間の方にゾッとした。9冊目の不実から読みましたが、シリーズ1作目から読んでみようかな。2017/08/06
HANA
65
実話怪談集。やっぱり著者の怪談って、人間関係や肉体にまつわる独特の「業」みたいなのを描いているような気がする。男と女の関係であるとか、友人関係であるとか、それがふとした瞬間に違った裏の顔を見せるような話がとても恐ろしい。ダイレクトに怪異を語るよりも、そのふとした瞬間が何とも……。故に収録されているものどれもこれも、何というかねっとりと湿度が高い話が多いような。登場人物の妄想か怪異か、読み進んでいるうちに、こちらまでその中に絡めとられていくようであった。とりあえずこの季節に読むに相応しい本ではあったような。2017/07/10
坂城 弥生
50
「カラスのいやがらせ」が印象に残った。カラス、賢そうだもん。2021/03/04
澤水月
39
「あの女」が薄くなったためかどの話も虚実皮膜あわいの転換見事、ピタリ2pに収まる巧さに感嘆。次章に続いても数合わせ小分け感もしない。幾つも実在の有名事件が浮かびそうでズラし今巻特にイイ。題通りな人々、妊娠出産、妄想に囚われた人々ばかり綴られるが一番「不実」なのは著者自身で、語られた虚実雑多な言葉を編み直し産み出し読者の常識を揺さぶる…素晴らしいプロ作家だと本当に舌を巻いた。継続してこのレベルの文章を刊行し続ける、これぞプロだと当たり前のことに感じ入る…美味しいあの女が大人しくなって新境地とは驚きそのもの2017/06/24