内容説明
デカルト、スピノザ、ライプニッツ、そしてカント……など。近代の哲学者たちはいかに世界と格闘したのか。批判やユーモアとともに哲学のドラマをダイナミックに描き出すヘーゲル版哲学史、ついに完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
47
スピノザの哲学は一言でいえば普遍から個に向かっていくものです。 要するに、神のみが実体であり、その唯一の実体である神の下に思考と延長という形式があるに過ぎないとするわけです。 『個別のものが一つの実体のうちに消えていく』128 しかし、ヘーゲルも指摘している通り、スピノザの欠点は個から普遍に向かえない点にあります。それに対して、その欠点を埋めて個から普遍へ、言わば個の哲学を生み出したのがロックとライプニッツでありヘーゲルは両者を一つのつながりとしてみているわけでして、これは非常に面白い視点だと思います。 2023/02/25
かわうそ
46
定期的に読み返したくなります。 ヘーゲルが現代に生きてたら…この講義の続きを聴いてみたいですね。『ロックは、たとえば、延長と運動を根本性質として特別視し、それらは対象自体に属する性質だとしました。バークリーは、大きいと小さい、速いと遅いが相対的なものだという視点から、ロックの考えの不合理性を見事にいいあてています。延長や運動がそれ自体で存在するものだとすれば、それらは大きいか小さいか、速いか遅いかといったことはまったくありえない。が、実際は、延長や運動の概念にはそうしたちがいがふくまれる、と。』P2602023/03/27
かわうそ
39
『かれはおおもとにさかのぼって、思考そのものから出発する。これは絶対的なはじまりです。思考からしかはじめてはならないことを、かれは、一切を疑わなければならないと、表現します。』 さすが当時、大人気だったヘーゲル教授なだけあります。分かりやすい言い換えにはっとさせられます。ここまでギュッとデカルトの思想を端的に示せるのはすごい。 哲学書を読んでいて分からない点があったら定期的にこの本に帰ってこようと思います。2023/07/29
またの名
7
ついに近代。他の何物も前提にせず思考から出発するデカルトに思考の自由への希求を読み取り、哲学をやる人はまずスピノザ主義にならなければダメと断言し、二律背反の原因を物自体から主観に移したカントに矛盾してるため内部に動揺と狂気を抱えた精神を見る。称賛に留めず限界も忌憚なく述べる語りは独自の理論と化し、知的直観を重視する思想が恵まれた天才にしか許さない哲学を誰にでも開かれた営みに取り返す。思考の力が遍く浸透した世界で勘や感情や熟練が活きる余地は消え、合理的システムが支配し発展する先は20世紀のモダンな大量殺戮。2017/09/14
tieckP(ティークP)
5
迫力ある講義。近代哲学については僕にもそれぞれの哲学者の認識がそれぞれあるわけだが、それらをヘーゲルがどう見ているかが分かって、(もちろんヘーゲルがその後の哲学史を決定づけたから、無自覚にその影響を受けた結果)おおよそ一致していたので安心した。フィヒテなんかは高い評価だけど内容は空疎だと知れて「あ、この程度の認識で良いんだな」とホッとした。またシェリングの用いる比喩が若干、トンデモでベーメみたいだと思ったら、ヘーゲルもこれはベーメの感覚的用語で置き換えることができる、と言い出して面白かった。2018/04/20