内容説明
のちの西行こと佐藤義清と平清盛。若き日の二人は北面の武士として友情をはぐくむが、ある夜、謎の存在に窮地を救われた時からその運命が大きく狂い始める。そして、義清は、鳥羽上皇の中宮、待賢門院璋子に心を奪われるようになる……。巨匠が描く大河伝記絵巻、待望の文庫化!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アルピニア
68
若き日の佐藤義清(後の西行)と平清盛の物語。全四巻のうちの第一巻。義清は歌、蹴鞠、乗馬、弓の才能を認められ、鳥羽上皇に取り立てられるようになる。清盛は自分にはない義清の才を利用したいと言う。義清と奇怪の中宮「待賢門院璋子」は、暗闇からあわあわと沸き立ち凝ってくる「あれ」が見えるもの同士、導かれるように出逢い、契ってしまう。並行して、想い人を自らの手で殺めて苦しみもがく「遠藤盛遠」が描かれているが、この先どう関わってくるのか。徳大寺実能の言葉「人の中に棲む鬼が歌を詠ませておるのじゃ」が印象的。2019/10/05
眠る山猫屋
20
マツケンの平家物語のイメージが残ってしまっていたようで、主人公の佐藤義清は藤木直人さんに脳内変換。待賢門院璋子に惑う様は、どんな男にも一度は訪れる運命の恋なのだなぁ、と。きっとそれは誰にもコントロールできない感情。壊れてしまった遠藤盛遠や源渡のからみは読んでいて、辛いほどでした。2016/01/02
りー
17
橋本治さんの双調平家物語、残すところあと一冊になったので、ちょっと寄り道。平清盛&若き西行法師=佐藤義清のバディは、この時代が好きな者なら、夢の組み合わせです。ファム・ファタル璋子への義清の恋と、平家物語でお馴染み遠藤盛遠&袈裟御前のエピソードが主に語られますが、夢枕さんならではの怪異「翁が降りてくる」現象とこれからどうやって絡めていくのか、楽しみ。このバディはやがて道を違えますが、それをどのように描くのかと合わせて、続きを読んでいきたいです。2019/10/04
mahiro
12
平清盛に佐藤義清、盛遠…とくれば平家物語だが、そこに何やら謎めいて陰に潜む妖しのモノ達がが絡む所が夢枕氏の世界だ。今のところ清盛は豪快合理的な頭脳の持ち主で友情にあつく、義清は繊細な感応力のある芸術家タイプだがこれからどういう展開になってゆくのか…2015/09/20
はかり
11
これは素晴らしい。「沙門空海…」以来の力作か。夢枕のこだわりや強い想いが感じられる作品になっている。陰陽師シリーズにおける男の友情も髣髴とさせる。清盛と義清の関わり方が興味深い。西行の行く末やいかに。2016/06/25