内容説明
没落名家に生まれ、しかし一族の誇りを背負い、流浪と困窮を生きた「詩聖」。中唐期の白居易や韓愈、北宋の王安石、また蘇軾、黄庭堅ら、錚々たる面々に中国第一の詩人と讃えられた律詩の大成者は、詩によって世界を変えうると信じた――。本巻は、蜀中の後期から病身を養う時期にかけて詠んだ、作品世界が研ぎ澄まされてゆく名品の数々を収録する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
14
第三巻は、蜀・成都にて厳武の幕下で働いていた頃から、約二年滞在したキ州で喘息、中気、熱病、糖尿病などに見舞われた病気の身を養う時期までの作品が収められている。五十九歳で亡くなる杜甫も五十代半ばを迎え、かつての宮廷仕えの生活を思い起こし玄宗皇帝を偲んだり、友人知人の逝去を悼む詩を作ることが多くなった。その一方で憂国の志はなお盛んであり、異民族の侵入に対する憤りや苦しむ民に対する同苦の念も変わることなく詠われる。雨や月を詠んだものや、雁や鶏、鸚鵡、猿など小動物を扱ったものも相変わらず多い。2019/06/07
鏡裕之
2
杜甫は、一度長安にて皇帝(粛宗)に仕えている。すぐ左遷の身となってしまったが、皇帝をお助けしたいという気持ちは終始変わらなかった。その気持ちが杜甫に嘆きの詩を書かせ、吐蕃との戦や官軍について意識を向けさせ、官軍や吐蕃についての詩を書かせたのだろう。皇帝を輔弼したいという気持ちは、死ぬまで杜甫の胸から消えなかったようだ。2017/03/08