内容説明
晩年にいたってなお断ち切れぬ出仕への思い。ついに長安への帰還に絶望した杜甫は、洞庭湖の南で漂泊の生涯を閉じる。しかし、その作品はいよいよ巧緻を極め、深い陰翳を文字に刻みながら、最後の段階にあっても前人未到の高みへむかい、さらなる歩みをつづける。作品検索に簡便な「全詩題索引」と詳細な「杜甫年譜」を添えて、書き下ろし全訳注、堂々完結!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ロビン
15
今巻は、キ州に滞在していた頃から、岳州や潭州、衡州などを行き来し、遂に洞庭湖の南で漂白の生涯を終えるまでの詩が収められている。有名な「岳陽楼に登る」は最晩年57歳の時の作である。詠まれている風物や物事は親戚や友人との交流や送別の辞、戦災による不幸や民の暮らしを思ったもの、雨や山など自然物などだが、特に印象的なのは晩年より強くなったのではと思われる王室への忠誠心である。詩人としてある程度名を馳せてなお長安へ戻り宮廷で働くことを杜甫は願い続けた。晩年において新しい詩型に挑戦していることにも執念を感じる。2019/07/06
鏡裕之
2
全4巻を追いかけて1400首以上の詩を読んできてたどりつく最終の詩。最後の詩は杜甫が最後に読んだ詩でもないし、死を匂わせるものでもない。だが、1400首以上の積み重ねが、読者を独特のゴールの感覚に導く。この独特の気持ちは、完読した者にしか味わえない。2017/03/11