内容説明
東京下町の救命救急センター。運ばれてくるのは、酔っぱらい、自殺未遂、クモ膜下出血、交通事故などで生死の際の患者たち――。最先端の医療現場では、救命だけが仕事ではない。助かる見込みのない患者を、いかにその人らしく安らかに逝かせてあげるか、それもセンターの医者の役割なのだ。危機に瀕した患者をめぐる医療の建前と現実を知り尽くした医者が描く、緊迫のヒューマン・ドキュメント。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kinkin
69
テレビのドキュメントでもよく紹介される救命センターの実態が医師、研修医側からの視点で書かれている。患者も致命的な怪我が多く常に生死の境界と緊張にさらされていることがわかった。テレビドラマ「ER」のような緊張の中にもユーモアや笑いがあるというのはやはり虚構の世界だと感じた。安楽死、HIV、緊急オペ、患者家族とのやりとりなども書かれていて命と接することがどういうことか朧気ながらわかったような気がした。2016/08/13
ぶんこ
41
「何をどうやっても助からない患者を、いかにその人らしく安らかに往生させるか、それも救命センターの医者の役目・・・」。 家族にとっては、まだ体が温かいと、どうしても死んだとは思えないという事を経験しているだけに、医者というものは強靭な精神力と、他者の気持ちを思いやれる想像力、優しさが必要なのだと痛感しました。 かなりきついお仕事ですね。 頭が下がります。 2014/12/28
扉のこちら側
33
文芸書で初読、文庫で再読。医療技術が進む中で、それ故に救われない存在が生まれてしまう悲しさ。それでも、救いたい、救われたいと思ってしまう。その救いがどのような側面を持つのか、まだ見えなくても。2013/02/22
ちゃんみー
28
医師というのも一つの職業であり、治療をいつ打ち切るのか、家族へどのように説明するのか等悩みが尽きない。救命センターへ運び込まれる人たちの人生のあれこれってのも多様。2020/03/29
なっちゃん
28
過酷な職場だと思う。体力的にも精神的にも。死を宣告するのはベテランでもキツイのだろう。植物人間になった夫を自ら介護する妻の話には、天寿とは、延命措置をする前なのか、後なのか、考えた。2015/01/12