内容説明
「持ち主が愛していた物は、不思議なことを起こすものだ」京都、下鴨――。高校三年の鹿乃は、ぐうたらな兄と、近くの大学で准教授をしている下宿人の慧と三人暮らし。亡き祖母からアンティーク着物を譲り受け、同時に、蔵にある“いわくつき”の着物の管理も引き継いだ。鹿乃は、まわりの人びとに強力してもらいながら、着物の秘密と謎をひもといていく。長い時を重ねた物に宿る、持ち主たちの想いや願いとは――。四編収録。
目次
ペルセフォネと秘密の花園
杜若少年の逃亡
亡き乙女のためのパヴァーヌ
回転木馬とレモンパイ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
れみ
327
シリーズ2作目。1作目よりもずいぶん登場人物が増えたなあ。亡き乙女のためのパヴァーヌと表題作が良かった。良かったけど哀しいお話だった。慧の過去やお父さんとの関係などはまだ詳しく書かれていないから、このシリーズまだ続くんだろうなあ。2016/01/06
ももたろう
290
全巻を読んだ時は祖母が鹿乃が悲しみから立ち直るよう仕掛けを用意したのかなぁと思ったのですが…なんだか雰囲気が変わったような…?良鷹と慧は鹿乃のナイトだと思ったけど実は鹿乃に救われてるのね。特に良鷹は両親が亡くなった時ちゃんと悲しみを出せていないのでは?その時に押し込めてしまった気持ちやずっとがんばって来た疲れが出て、今ボーとしちゃってるのかもしれないなぁ。前よりも着物の知識が増えていちいち調べなくても情景が浮かぶようになってきたのがうれしい(^^)魅力的なキャラも増えたし、つづきが楽しみです!2015/08/12
ちはや@灯れ松明の火
215
昔に想いを馳せ、今は亡きひとを偲んで。誂えたときの喜びも手放したときの悲しみも絵物語のごとく織りあげて、主を喪った着物たちは生き続ける。蝶のおとなう春空を夢見て眠る片栗の花、ミルテの花と五線譜に弾む音符が詠む相聞歌。蜜よりも甘い秘密をいとおしみ。水の鏡を蹴散らして鬼さんこちらと呼ぶ杜若、天蓋の外に焦がれて時間を止めた回転木馬。飲み干そうとした秘密にくるしんで。花も人も儚く散らす時の風は、記憶に埋もれた種をふたたび芽吹かせる春を運んでくる。主の分も生き永らえる着物が守るのは、ふたりしあわせだったときの証。 2016/06/19
優愛
192
「亡き乙女のためのパヴァーヌ」が一番好きでした。空襲による悲劇は消えない傷跡を残したまま長い長い月日を越えて今も尚多くの人々を苦しめる。"この先あらゆる苦しみと悲しみが、この子の上を素通りしていきますように"こんなにも愛されている。慧さんと繋いだ手をどうか離さないでね。大切な人はいとも簡単にいなくなってしまうと、わかったなら。淡いピンクを基調とした花の咲き誇る装丁は一話読み終える度にそっと触れては愛しくなる。アゲハ蝶、回転木馬、レモンパイ。もっともっと溺れていたい。命の宿る初夏の京都に、欲を言えば永遠に。2015/09/11
SJW
171
シリーズ2作目。相変わらず鹿乃と彗の絶妙なコンビでアンティークにまつわるミステリーの謎を解いていく。今回は、鹿乃の友人の話も含まれて登場人物の巾が広がった。4話目には、なんとぐうたらしている良鷹が大活躍し、嫌々ながらコンビを組んだ仕事仲間の娘 真帆と謎を解いていく。どちらのコンビも恋に発展しそうで、ますます面白くなっていき、次の作品に期待してしまう。息子の嫁さんが今週末息子と遊びに来るが、ここに出てくる中高大の卒業生なので下鴨アンティークを勧めてみよう。2017/09/21