内容説明
天皇家・摂関家内部の権力抗争が武力衝突に発展し武士の政界進出の端緒となった保元の乱。そこに、乱世の機縁をみた慈円は、神武天皇以来の歴史をたどり、移り変わる世に内在する歴史の「道理」を明らかにしようとする。摂関家に生まれ、仏教界の中心にあって、政治の世界を対象化する眼をもった慈円だからこそ書きえた歴史書の、決定版全現代語訳。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
63
始めの2章で、第八十四・順徳天皇まで各天皇および皇子、歴代の各大臣や歴史的事柄が掲載。つい凝視したのが、氏長者や役職者の変遷。様々な政治的駆け引きなどを頭に浮かべてしまう。踏まえて、各種政変・合戦や女帝を含めた皇位継承などの社会面から、仏法・王法や命の長短・前世の報いなど宗教面を”道理”で斬る!執筆の意図にも納得感。印象的だったのが、東大寺の楽慶供養での頼朝一同の佇まい。静けさの中の熱い思い。一方、『藤原氏の三功』の2点目が、補足を踏まえても、そしてググってみても読み取れなかった。今後の宿題ですね。2021/12/19
だまし売りNo
36
「女人入眼ノ日本国イヨイヨマコト也ケリト云ベキニヤ」二一世紀人から見ると慈円は進歩的な人物に見える。慈円は藤原摂関家の出身である。摂関家は天皇の生母を出すことが権力基盤であった。その意味で女人入眼を正しい政治のあり方と評価する。これに対して院政は天皇の父親であることが権力基盤になる。家父長制的な体制である。慈円は後鳥羽院の側近になったが、実は院政とは相容れない思想を持っていた。このギャップは承久の乱における後鳥羽院とのギャップになる。2022/10/31
寝猫
31
大河ドラマに触発されて読みたくなりました。 神武天皇から始まったのには面食らいましたが読んでいると頭中が整理されるような気分になって面白く読めました。 小説も良いけれど、その時代を実際に生きていた人の思いや考えに触れることができるのはありがたいです。 世の筆まめさん達感謝ですね。2022/09/02
フク
11
#読了 慈円による御鳥羽院への諫奏の書。かなり強い言葉で直接的に諫めている。 武士の存在や振る舞いを見下しているが、実際に武士の世なのは仕方ないので武士は利用しようという態度もあり、諸行無常や諦念を感じた。 冒頭の歴代天皇年代記はワンパンで眠れる。そこを乗り越えると、保元の乱あたりから描写が生々しく昂ぶる。 呼び方が変化する時があり、訳者の補足が無ければ投げ出していた。 kindle2023/02/15
おMP夫人
9
今風に言うなら『そうだったのか! 日本の歴史と仏の教え』でしょうか? 仏教的見地から歴史を通じて国のあり方、人のあり方を説く説法の書。という印象でした。この時代一般的だった末法思想がそこかしこに見えるのが大変興味深いです。愚管抄のテーマは『道理』なのですが、この言葉、当時流行していた言葉で様々な意味を持ち、今で言う『ヤバい』(好きな表現ではありませんが)という単語のようにかなり便利な使われ方をしています。読み進める上で、場面場面の『道理』の意味合いをうまく汲み取れるかがポイントとなるかと思われます。2012/06/10