内容説明
尾張中村の鼻たれ小僧日吉は負けん気の強い暴れん坊。だが心やさしく頭もきれる。百年うち続く戦乱に奪われ焼かれ、犯され殺される庶民の地獄絵を見て、戦いのない日本を作ろうと大志をいだく。自ら元服して木下藤吉郎と名乗り、諸国修行の旅に出た彼を待ちうける難関の数々。痛快! 天下取り物語の始まり。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旗本多忙
16
考えて見れば、秀吉小説を読むのは何十年振りかになる。映像で見る秀吉像の印象が強く、もっとひょうきんさがあってもいい感じだ。戦続きの世に、人の何倍働いても安心な生活は望めない。戦をなくし平和な世にする者も現れず、侍も衰退し野党と流民の類いばかりの世になるだろうと日吉丸は思う。宗忍和尚の薫陶に、ならば自分が天下を取り、平和な世にしようと一歩を踏み出した。家来を作り、よき大将に仕えようと探しに出た日吉丸は、後々に腹心の家臣となる小六と出会う。2018/12/29
ケンケン
15
(596冊目)久しぶりの山岡作品。ホント読みやすいな~テンポの良い文章・目まぐるしい展開に、あっという間に読み終えた。戦乱の世を終わらすべく天下への夢を抱いて旅立つ日吉丸、盟友・蜂須賀小六との出会い、見聞を広げつつ何故か細作の道へ…お館様との出会いは、まだすれ違いの一巻目でした。 いざ、次巻へ~2019/06/22
ワッツ
14
秀吉が世に出る前の史実は不透明不明瞭なので、あまり興味も湧かないのだが、これほど面白く読ませるとは。小説としては当然のことながら、下手な自己啓発書より余程重みがあって為になる。心に突き刺さる文が沢山ある。お春との恋は、熱くて切ない。恋愛物の話はいつも辟易と読んでいたが、これは違った。物凄い共感だ。絶対、悲しい結末になることがわかるせいもあるのかも知れん。続きがごく楽しみだ。2011/11/24
サチオ
12
テンポの良い展開に大言壮語なセリフ、何やら舞台を観ているかの様。今まで信長に仕えてからの秀吉しか知らなかった私にとって最初の盗賊まがいの徒党とのシーンは衝撃的でした。まだまだこれから!面白いです。2018/12/18
自然堂
6
山岡荘八作品はやっぱり面白いなぁ。少々展開が強引な所が散見され、「織田信長」に比べると幾分完成度が低いようにも思えるが、それでも気付くとページを繰る手を止められなくなっている。信長が人智の及ばぬ隔絶された境地で孤独に戦い続ける「天才」だとすると、本作の秀吉はどん底からど根性で這い上がってくる「鬼才」といった所か。境遇に恵まれず、弱肉強食の世界に放り込まれた草食動物が無手勝流を駆使して一足飛びに肉食動物達を飛び越えていくような、言い換えれば負け組が勝ち組を呑み込んでいくような痛快さがある。2013/02/08