内容説明
日本を制した関白太政大臣豊臣秀吉の目は大陸に向かった。だが二度にわたる朝鮮出兵は大誤算、自らも病にたおれた。幼い秀頼の行末、武将たちの不和、運命の急激な下り坂に焦りもがきながら太閤は、六十二歳の生涯を閉じた。 露とおき露と消えぬるわが身かな 浪花のことも夢のまた夢(伝時世)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワッツ
11
運に見放された秀吉の凋落ぶりは想像以上で読むに堪えないくらいであった。それにしても、秀次事件など秀吉が秀頼を跡継ぎにするべく起こしたというわけではなく、なんとも政治の流れに巻き込まれた悲劇だったようだ。最後まで秀吉は武人であった。外国の戦場で野垂れ死にを覚悟した秀吉。最後はただの気狂いボケ老人で終わるのかと思っていたが、最後まで筑前時代の面影を残すアツい秀吉であった。今まで秀吉の晩年は全然興味がなかったけれど、もっと突っ込んで秀吉の晩年について知りたいと思いました。2011/12/23
自然堂
6
切ない。豊臣の興亡という意味では敵役は家康なのだろうが、こと秀吉個人に関しては敵がおらず、さりとて周りに味方もいない中、孤独に死んでいった。老いた自分には過大な夢だと気付かず有頂天のまま始めた文禄・慶長の役に自分の死に場所を求めるもそれすら叶わず…。転機はやはり、光秀らの暗躍で秀吉が位人臣を極めたる地位に祭り上げられてからだろう。過大な権力を握り変貌した秀吉が手に負えなくなった途端波が引くように離れていった光秀。口癖の様に「衆生の為」と言っていたが、人間とは薄情なものだ。痛切に支配者の孤独を描いた作品。2013/05/27
都人
3
大昔に 吉川英治の「新書 太閤記」を読んだことがある。それと比較すると、吉川氏のほうが「思い入れ」が強い様に感じた。尤も、山岡氏は「徳川家康」で太閤記の殆どは書いているからなあ。2020/03/04
へたれのけい
2
朝鮮出兵などの晩年。箱根や伊達が登場しないのはちとさみしいかな。2025/01/21
2兵
2
最終巻。賤ヶ岳と小牧長久手をじっくり描いた反動か、四国・関東・奥州征伐はほぼ省略され、朝鮮出兵と秀次事件の経過が詳細に描かれる。関白太政大臣となり、権力を手にしたことで、以前までと比べて完全に人が変わってしまった秀吉。とはいえ「豊太閤は、頭の良くない穿鑿好きが、自分にあてはめて考えた史的結論ほどに、他愛のない人間であったであろうか…?」(作中より引用)とあるように、単にステレオタイプな独裁者、横暴で野望に溢れた人間として描かれるわけではなく、寧ろ人の話を聞かず、周りとの齟齬が深くなり、老いや御家騒動に2021/04/20