内容説明
国宝級の美術品が厳重に警備された屋敷から忽然と消え失せた。
はたしてルパンの仕業なのか?
名刑事ガニマールがその謎を解き明かす『古代壁掛けの秘密』、毎年同じ日に古い屋敷に集まる人びとの秘密をルパンが探る『三枚の油絵の秘密』など、七編を収録した傑作短篇集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
63
私にとって読書の原点といえる本。生まれて初めて父から本を買ってあげると言われ、渋谷のデパートで散々迷ったあげく、これとホームズの『悪魔の足』を選んだ記憶がある。七つの短編のどれも意外性があって面白く、またシャンゼリゼ広場やマロニエ並木や裏通りを思い浮かべながら、パリの街にいるような気分に浸る事もできる。ルパンとガニマールの駆け引きが爽やかであり、今思うに、どこかデュマの冒険小説を思わせる。ルパンはいつもながら老刑事に花を持たせる余裕があるけれど、本作ではガニマールもルパンの謀略を見破り存在感を示している。2017/01/15
ホームズ
18
どれも短い作品ですがワクワクドキドキで(笑)ルパンは怪盗というよりも探偵役でしたね(笑)しっかり獲物は手に入れていましたが(笑)もっとルパンの登場する作品が読みたくなるな~(笑)2012/08/30
rigmarole
13
印象度B+。多様な状況で多様な事件が展開される短編集で、本書でも間違いのない一定の愉しみを与えてもらえました。特に第二話の心理トリックと第三話の仕掛けにガニマール刑事をまんまとはめ、どんでん返しで終わるところは愉快痛快。「盆と暮といっしょくたにきたような」「ばかいうない」といった古風な表現も相変わらずの愉しみ。しかし第六話で、展開が早すぎてカラクリがどのように解けたのかよく分からないのは短編の恨みとも言えますし、第七話では、意欲的ではあるがSF色が濃過ぎて推理小説としての面白さに欠け、最後の方はやや不満。2025/03/20
イリエ
9
ルパンの短編集。展開はスピーディーだが、著者ルブランも登場するなど見どころ多数。推理小説のハブになったトリックもあるらしい。また、訳がなんとも、この表紙のようでたまらなく好き。「『あっ』ルパンがさけんだ。少女が猛犬の体当たりをくって倒れたのだ。両前脚をかけた猛犬がかみつこうと(略)猛犬はぎゃっとさけんでおどりあがり、どさっと倒れると死にものぐるいで土をかきむしった。」2019/07/16
a19
7
怪盗ルパン全集全15巻のうちの10巻。10巻は短編七つからなる。どの短編も引き込まれる。作者のモーリス・ルブランがルパンから話を聞いて小説を書いた設定なので、作者ルブランも作品の中に登場する。ルパンは怪盗だが、作品では探偵として悪人を懲らしめてゆく痛快さ。フランスが舞台なので、アニメではお馴染みの銭形警部は出てこない。でもガニマール老刑事がそのモデルになったのかな、と思ったり。とても楽しかった!!(登録は文庫でしているが、実際は1970年発行のハードカバーで読了。定価280円とあり時代を感じた。)2014/01/02