内容説明
久喜(くき)駅手前の線路沿いで屍体が見つかった。身許は東和(とうわ)紡績の社長、死因は銃殺と判明。疑いの目は、経営側と対立する労働組合や、金で繋(つな)がる新興宗教に向けられるが、捜査は難航する。そんななか、鬼貫警部は「ある証拠」に着目して九州へ向かう。そこで得たものとは――。本格推理の巨匠・鮎川哲也の記念碑的傑作が蘇(よみがえ)る。第13回日本探偵作家クラブ賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
334
鬼貫シリーズで最初に読む作品としてオススメしたい一冊。文章も『黒いトランク』から短期間でかなりとっつきやすくなっている。この作品でも、鮎川氏の手がかりのばらまき方や、犯人のミスの拾わせ方がすごく上手だとしきりに思う。クイーンばりのフェアプレイを貫きながらも、探偵役の鬼貫が刑事だということもあって、最近の新本格に見られるような動機度外視のスタンスもとらず、むしろ隠された動機の発覚が、事件の新展開を呼び込むことが多いのも鬼貫シリーズの特徴。この醍醐味を感じられるようになったら、もうやめられなくなる。2018/05/07
HANA
65
線路上で発見された会社社長の死体。労働争議、新興宗教と容疑者は次々に現れるがいずれにもアリバイがあり…。著者の時刻表トリックといえば『黒いトランク』が圧倒的に有名なのだが、本書はそれに劣らず優れたトリックが使われている。というか複雑怪奇すぎて読んでる最中でもよくわからなかった前者に対し、単純ながら優れた効果を発揮している本書の方がいいかな。事件も鬼貫警部が登場してたった一つの証拠から犯人を導き出す過程も、まさに足の探偵の本領発揮といった感。トリック、予期せぬ出来事とミステリのお手本みたいな一冊であった。2021/12/23
セウテス
58
鬼貫警部シリーズ第四弾、「黒いトランク」に次ぐ作品です。1960年当時、社会的話題であった労組と経営陣の対立や、新興宗教の問題を取り入れミスディレクションにチャレンジしています。勿論メイントリックはアリバイ崩しになりますが、趣の違う二種類を用意して展開を遅らせません。鬼貫警部が登場してからは、写真を追っての地道な犯人探しも、犯人を特定してからのアリバイ検証もスリリングなストーリーが楽しめます。鮎川氏の高いリーダビリティを再確認しました。ほぼ日本でしか成り立たない時刻表トリックの、基本的な名作だと思います。2015/05/11
みほ (o^-^o)
47
鮎川哲也さん、初読みです。本格推理小説でも綾辻行人さんとは全く違う、時刻表等を使ったアリバイ崩し、一つ一つ可能性を潰していく警察の地道な捜査。私、こういうのが好きです。全ての事実を読者にも公平に晒し、刑事たちと一緒に推理する楽しさがあります。もちろん私には全く分かりませんでしたが。面白いですね!他の作品も読んでみよう(*^^*)それにしても、当時は誰も彼もヘビースモーカーで、絶えず誰かがたばこ吸ってますね。今じゃ考えられない。でも町の情景や人々の暮らしがよく描かれていて、何とも言えない雰囲気がありました♪2015/11/16
geshi
43
これぞ本格推理小説と太鼓判を押せる名作。ミスリーディングのストーリー展開から、鬼貫の可能性を一つ一つ潰していく捜査によって思いもよらぬ犯人像が浮かぶ上がり、後半はアリバイ崩しとなる。アリバイトリック自体はシンプルながらも、時刻表によってパズルピースが正しい所に嵌まる快感を得られる。単なる替え玉のトリックと思っていたものが反転して使われる精神的トリックも流石の巧さ。最後に明かされる犯人のミスも、実は最初から目の前にあり、ロジックで詰めていけばちゃんと気付けるようになっているフェア精神。2017/02/16
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