内容説明
死んだはずの妻、張藍(ちょうらん)が生きている。その報を受けた林冲(りんちゅう)は、勝利を目前にしながら戦を放棄し、ひとり救出へと向かう。一方、呉用(ごよう)は攻守の要として、梁山泊の南西に「流花寨(りゅうかさい)」を建設すると決断した。しかし、新寨に三万の禁軍が迫る。周囲の反対を押し切って、晁蓋(ちょうがい)自らが迎撃に向かうが、禁軍の進攻には青蓮寺(せいれんじ)の巧みな戦略がこめられていた。北方水滸、激震の第九巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
286
急先鋒索超登場。今まで読み進めてきて、戦の強い英傑よりも、職人気質な裏方や、力はないけれども心意気のある漢が、私の好みに合っているのかと感じていたが、索超は何故か一発で好きになった。ただ、これまでの流れからいって、最初と死ぬ時だけクローズアップされ、それ以外は他に埋もれてしまう可能性が高いような…。とりあえず再登場が待ち遠しい。他にも、秦明の結婚や、楊令が子午山に、扈三娘が梁山泊にそれぞれ入山、そして異常な執念にまみれた鄧飛の最期等、興味深い逸話が満載で、大きな戦はないものの、読みごたえは抜群。2021/12/01
しんごろ
194
新たに豪傑達の梁山泊の入山が多かったですね。本陣の戦いは大人しかったですが、致死軍、飛龍軍が活躍!鄧飛がかっこいい(^^)解珍がすっとぼけた感じがいいね~。今回は梁山泊の整備をメインにした人間関係、人間模様といった感じの話が多かった気がします。そして意外にも愛もテーマかな(^^;)2017/07/23
ehirano1
146
本巻のメインイベントは、青連寺の罠にまんまとハマった挙句、行方不明になるわ、救出部隊を危機に晒すわ、己も重傷を負い三途の川を渡りかけるわ、挙句、治療に当たった安道全を心配させて泣かしてしまうわで当然軍法会議に掛けられて死刑判決を受けるも、鶴の一声により「一年間牧場で馬クソ掃除」という驚愕の判決。果たして、戦士としての林冲の心中はおそらく「頼むから死なせてくれ」ではなかったかとwww。2019/12/21
納間田 圭
138
罠、罠、罠の連なる章…9/19。両手の生爪が削ぎ剥がれるような感覚。暗闇で臭い糞尿にまみれる様。梁山泊側の打つ手は…湖の南西に”流花寨”の新設。宋の官軍の打つ手は…梁山泊の心臓たる”闇塩の道”の断絶。そんな中に散りばめられた女性たちの姿に…男達の笑えるほどの純粋加減。梁山泊側に来た美しく可憐な「扈三娘」は…僕の一等お気に入り。死んだはずの林冲の妻「張藍」は…死しても尚〇〇。ついに秦明の真っ直ぐな想いは…「公淑」に通じた。そして…”楊令”少年が子午山の王進の元に…送られた。さぁ−修行の時が始まる‼︎2021/11/14
s-kozy
91
うーん、紛うことなき豪傑の林冲も人間なんだなぁ。強さだけではない人間らしい弱さも併せ持つ。本巻では梁山泊の名医(または医療バカ)・安道全の手術の場面がよかった。大変な迫力で手に汗を握った。戦の小説ではあるものの兵士や将軍だけでなく、それを支える人達もきっちりと描かれているのがこの小説の魅力の一つだと改めて感じた。だからこそ、「それぞれが、自分の場所で戦っているというだけのことよ」(王英)(208頁)というセリフが大きな説得力を持つ。2017/04/28