内容説明
トランス状態に入ることで、日常の鍛練を超越した高度な踊りを披露するバリ島の呪術的祭儀サンギャン・ドゥダリ。人を地に縛りつける重力からいかにして逃れるかを追求してきたバレエのポワント。軽業的なアクロバットによって異次元空間を作り出し、見る人を幻惑するサーカス、中国雑技、現代舞踊、ヌーヴォー・シルク。これらの身体表現には、非日常的・非人間的なアクロバティックな動きが共通してみられる。アクロバットは人の無意識に潜む神のあわられか、それともアクロバットによって人は人を超えたものを求めるのか。そもそもアクロバットとはなんなのか。世界各地に見られるさまざまなアクロバティックな身体表現をつなぐことで見えてくる、身体のコスモロジーを考察する。
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目次
1 フェティッシュでアクロバティックな姿態──バレエのポワントを考える 空中浮遊/シュル・ラ・ポワント/「空飛ぶ機械」と眼差しの力学/もっとも初期のポワント/ポワント向きにつくられていなかったシューズ/ポワントその後/さらなるテクニック2 サーカスとシャーマニズム──足の長さについての民俗的な想像力をめぐって 南インドのサーカス/カバが口を開けて歩く芸/ふたたびカバに出会う/テイヤムという呪術芸能/高足とクラウン芸3 トランスと非トランスのゆらめき──バリ島のサンギャン・ドゥダリに踊りの原郷をみる トランスを呼び起こすもの/少女の呪術的舞踊、サンギャン・ドゥダリ/鋼のように後ろにそる少女の身体/月明かりと夜気と花々と……4 「トータル・シアター」としての身体技──中国演劇のスペクタクル性と雑技 主役級の俳優の華麗なアクロバット/演技力と身体技/役者、すなわちトータル・シアター/戦闘、競技、労働、雑技、祭儀/雑技の国際的な祝祭/中国雑技の故郷/雑技学校の子どもたち5 現代舞踊の挑戦──「見世物」と「軽業」による新境地 『パラード』/バビレのアクロバットすれすれのバレエ/空間デザイナーとしてのドゥクフレ/同性愛に懊悩するチャイコフスキーが、バレエ作品になる/ストレップ・リングサイドの実験/ポスト・モダンダンスと「タスク」/ビルディングの外壁を歩いておりる/ダンスとブランコ芸がひとつになる6 近代サーカスの誕生、そしてヌーヴォー・シルクという変容──いま、サーカスでなにが起こっているか リングを回る曲馬から、近代サーカスが誕生する/見世物から「地上最大のショウ」へ/変貌するサーカス/サーカス芸と他ジャンルとの融合/「ヌーヴォー・シルク」という現象/ジンガロ・人馬一体の夢幻美がもたらす新境地/ゼロからの発想おわりに