吉川英治歴史時代文庫<br> 私本太平記(八)

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吉川英治歴史時代文庫
私本太平記(八)

  • 著者名:吉川英治【著】
  • 価格 ¥785(本体¥714)
  • 講談社(2014/08発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784061965706

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内容説明

湊川に繰り広げられた楠木軍の阿修羅の奮戦。さしもの正成も“敗者復活”の足利軍に制圧された。正成の死は、後醍醐方の大堤防の決壊に等しかった。浮き足立つ新田義貞軍、帝(みかど)のあわただしい吉野ごもり。その後の楠木正行、北畠顕家の悲劇。しかし尊氏も、都にわが世の春を謳うとは見えなかった。一族の内紛?勝者の悲哀?彼は何を感じていたか。終章「黒白問答」が、その解答である。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

chantal(シャンタール)

90
ついに最終巻。尊氏は結局最後まで、世を平定しきれないまま、乱世の中でその生涯を閉じた。裏切りの連続、終わらない争い。人間の権力欲、疑心暗鬼。いつの世も、人間の営みって、実は何一つ変わってないのかなと。南北朝が統一されるまでこの後50年も待たなければならないのだけれど、どうやって統一されたのか、それもなんだか気になる。最後は尊氏の追善式で、立派になった覚一と右馬助たちとの邂逅、観世流の創始者?と思われる若者の出現など、これからの歴史絵巻に続いて行くだろう人物の出現で、余韻を残して幕を閉じた。2019/08/02

Willie the Wildcat

76
遂に迎えた足利vs.楠木の対峙。落日の中、語り合う正成・正季兄弟。嗚呼、分かっていてもグッとくる場面。一方、尊氏と義貞が共に示した懺悔。再認識した心の喪失感と、修羅六道の身からの救い。結果、その後の一連の戦いに滲む虚しさ。唯一、尊氏の矛盾を鋭く突いた夢窓国師の切り返しに胸がすく!最後の場面で、集った面々が奏でる唄と舞。文字通り、平和への願いで〆。掲載・引用史料多々ある中でも、「願文」が印象深い。無論、一次史料がなく脚色となっている点も含めて全八巻を堪能。2022/02/15

優希

71
楠木正成の死から尊氏の死までが描かれる最終巻。常に対立の形があり、戦いが起きているのは、戦国時代の序章のように思えました。尊氏に虚しさを感じてしまうので、室町幕府が始まったことで、応仁の乱が起きたのも当然のように思えました。平安から戦国の間で何を感じたのか、吉川流の答えを出したような気がします。2019/01/17

ケロリーヌ@ベルばら同盟

57
日本開闢以来の凶事。京都という一盆地の底で、数万にのぼる人間が敵味方となって殺し合う…。戦の中であっては、死は潔くも美しくもない。正成が散り、義貞が破れ、後醍醐は吉野山中にその怒涛の生涯を閉じる。勝者は尊氏であったのか?北朝の帝を戴き、室町に幕府を開くも、弟直義と執事高師直の反目から骨肉相食む泥沼の修羅へとその晩年は深い闇に墜ちる。吉川英治がその最後の大作で描き出す、「この世の影なき魔物」平和な世を希求しつつも、あくなき権力の欲望に踊らされる人の心の不思議。現代に生きる我々は、そこに何を学ぶべきだろうか。2019/12/11

姉勤

42
湊川で楠木正成が討たれた後は、後醍醐帝は吉野に逃れ南朝を打ち立てるが、新田義貞などの諸将を歴戦で失い、北朝側も勝者の驕りと尊氏の優柔と不断が幕府内の権力抗争を招き、観応の擾乱を経れば、尊氏の両腕たる弟の直義、執政ともいえた高師直を殺す結果となった。騒乱は続く中、義詮に譲り、将軍を退いた尊氏も不治の病の床に。終章と仕舞いの題につけた黒白は、尊氏という人物を借りて、世の人の中の善と悪、光と闇は時々場々によって消えては表れ、決めつけることの危うさを、戦前と戦後を通じて書を著してきた著者の魂を受け取った気がした。2019/07/10

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