内容説明
なぜ、建武の新政が暗礁に乗りあげたのか? 根本には、公卿は武家を蔑視し、武家は公卿を軽んじていたからである。それが端的に論功行賞に現れ、武家の不満は爆発した。武家は不平のやり場を尊氏に求めたが、この趨勢を心苦く思っていたのが、大塔ノ宮だった。尊氏を倒せ! その作戦は宮のもとで練られていた。北東残党の蠢動は激しく、宮には絶好の時かと思われたが……。
感想・レビュー
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Willie the Wildcat
79
殿法院や廉子の思惑に、運命を左右された感のある護良親王。護良親王の”殺害”が齎す禍根は、両統迭立の崩壊以上の影響を齎すことになるはず。印象的なのは、(『太平記』創作かとも思われるが)校書殿での尊氏と正成のH2Hの場面。一方、どうにももどかしさを感じたのが、”蟄居”を経ての尊氏出陣。本望と朝廷尊重の両立という理想、それとは相容れない朝廷の目標と尊氏の大望という矛盾という現実。但し、尊氏にとっては全てが道理。敗走先で遂に得た院宣、尊氏反攻の狼煙。ここでも薬師丸、日野家との因縁也。2022/02/09
chantal(シャンタール)
78
協力して鎌倉幕府を倒した尊氏と義貞だったが、やはり元々犬猿の仲だった二人、再び世は戦乱の中に。尊氏は朝敵とされてしまい九州へ落ちる。正に「昨日の友は今日の敵」、後醍醐も人を見る目がないなあ。このままでは天皇家が骨肉の争いになるとの楠木正成の進言もおバカな貴族たちには受け入れられず、世は南北朝に分かれての戦乱の世へまっしぐら。正成も浮かばれないよね。2019/06/02
優希
71
建武の新政は暗礁に乗り上げたようです。公卿と武家の反目し合う精神の現れでしょう。武家の不平のやり場となり、大塔の宮のもとでは倒す対象となった尊氏。北条残党は激しいですね。北条を倒そうとしている人たちもそれぞれの思惑で動き、複雑な時代背景になっているように感じました。2019/01/17
ケロリーヌ@ベルばら同盟
54
足利尊氏という人物の奥深さ、複雑さが強く意識させられた第六巻。北条討伐の功により、後醍醐天皇の諱の一字"尊"を頂き、武蔵守・鎮守府将軍に叙せられるも、彼を次の北条高時と敵視する大塔宮護良親王との軋轢、北条残党の蜂起に対抗する為、勅を待たずに断行した東下により遂に朝敵の汚名を負う。目まぐるしく代わる敵味方。今日の勝者は、明日には敗れ去り、都は再び戦の業火に灼かれる。ぶらり駒と軽んじられて来た尊氏だが、食えぬ心底の見えぬ男と新田義貞は畏れ、弟直義は佐々木道誉をも凌ぐ大鵺、矛盾の人と言う。南北朝の動乱が始まる。2019/08/21
再び読書
42
いよいよ終盤に際し、建武の新政は暗礁に乗り上げ、尊氏と後醍醐天皇との最後の戦いに突入する。のちの高師直、足利直義のあまりの性格の違いに争いの兆しも見られる。新田の詰めの甘さに助けられる。また佐々木道譽も尊氏に取り込まれた感もあり、いよいよ南北朝への道のりが見えてきた。2021/09/12