内容説明
20世紀アメリカが生んだ鬼才、幻想と怪奇の作家、ラヴクラフト。彼の想像力の産物であり彼自ら病的なまでに憑かれていたクトゥルフ神話が怪しく息づく代表作「インスマウスの影」と「闇に囁くもの」。デラポーア家の血筋にまつわる恐るべき秘密を描いた「壁のなかの鼠」、彼の知られざる一面を垣間見せる異色作、ブラックユーモアの「死体安置所にて」の全4編を収録。深遠な大宇宙の魔神の呼び声が、読者を太古の昔から永劫の未来につづく暗黒世界のとりこにすることはまちがいない。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
242
ラヴクラフトの怖さはグロ場面を見せつけるホラーとは違う。恐怖の本質は隠されて正面からは見えない。薄いカーテンの向こうにぼんやり浮かび上がるような薄ら寒く気味の悪い怪異だ。読み進むにつれ、少しずつ恐怖の存在の間接的証拠が並んでいく。ラヴクラフト神話体系の開祖のようにも言われるが、彼は彼以前のホラー小説の設定も体系に取り込んでいる。短編集で、主人公が助かるかどうか、毎回解らないのも面白い。ラブクラフトは海産物が大嫌いで、それを演出に取り込んでいて、鮨や刺身の好きなに日本人にはピンと来ないものもある。
Kircheis
112
★★★☆☆ 初ラヴクラフト。 クトゥルフはこの本には名前しか出てこなかった。 雰囲気で読ませる作品。特に「インスマウスの影」は、自分が主人公と同化し、必死で逃げ道を探している気分になる。とりあえずインスマウス面にはなりたくないな。 「闇に囁く者」もジワジワ怖い。地球外生命体達は、主人公をおびき寄せて何がしたかったんだろう? 「壁の中の鼠」はオチが分かりにくかった。カニバリズムの話か? 「死体安置所にて」は普通の短編スリラーで、サクッと読める。 イア!イア!クトゥルフ フタグン!2018/08/17
吉田あや
97
鬱蒼としたとんでも話な展開を、品良く文学的に纏め上げるラヴクラフトの剛腕ぶり。でも、読みにくい。悪夢へと誘うかの如く睡魔がやってくる(個人的問題…ではないと信じたい)。悪夢のようでありながらも、ぐいぐい惹き込む鮮明な描写と、しっかりと作り込まれた世界観でありながらも、くっきりと陰影を見せたくないインスマウスの町のように、積み上げられるテクストはひたすら難解に、ひたすら眠い。とにかく眠い。日本の柳田邦男に続く魔導士ラヴクラフト。面白眠い睡魔の書。2017/08/16
財布にジャック
93
こ、こわいです!SF?ホラー?白昼夢?一昨晩読み始めたんですが、数十ページで怖くて断念。翌日電車の中で再挑戦しました。この本は、誰もいない自宅で夜ひとりで読むのが躊躇われます。そもそもクトゥルフって何?という疑問からこの本を手に取った無知だった私。怖いものみたさで結局最後まで読みましたが、こんな本書いたラヴクラフトって作家さん凄すぎます。「インスマウスの影」を思い出しただけで、今晩も悪い夢にうなされそうです。でも、物凄い魅力、いや魔力があるお話でした。2010/10/13
absinthe
90
好きだなぁ。毛虫がじわじわ這い上ってくるような嫌な感じ。チラ見せで肝心のところはもろ見せしない。怖くて目をつぶって、怪物の正体は直視しないような描写。自分の体の中に嫌な汁が染み込んでくるように、だんだん狂気に染まっていく展開。筆頭作の『インスマウス…』はとにかく有名で魚の化け物が這い回る街でかくれんぼ脱出ゲーム。『死体安置所』も良いが。『闇に囁くもの』は秀逸。こないだ読んだばかりだけど。定期的に再読してしまう。2025/10/22




