内容説明
南極大陸の奥深く、ヒマラヤすら圧する未知の大山脈が連なる禁断の地に、ミスカトニック大学探検隊が発見したもの、それは地球が誕生してまもないころ他の惑星より飛来し、地上に生命をもたらした〈旧支配者〉の化石と、超太古の記憶を秘めた遺跡の数々だった! やがて一行を狂気と破滅の影が覆ってゆく……。「時間からの影」とならぶラヴクラフト宇宙観の総決算「狂気の山脈にて」をはじめ、中期の傑作「宇宙からの色」「ピックマンのモデル」や、初期の作品「眠りの壁の彼方」など傑作全7編を収録。【収録作】「宇宙からの色」「眠りの壁の彼方」「故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実」「冷気」「彼方より」「ピックマンのモデル」「狂気の山脈にて」「資料:怪奇小説の執筆について」「作品解題/大瀧啓裕」
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
196
absinthは、この創元のこのシリーズではこの4巻が一番好きだ。ラヴクラフトは既存の世界の神話を使わずに、当時の科学的、唯物論的な世界観を恐怖の中に取り入れた。南極大陸の探検の途中で恐ろしい発見をする『狂気の山脈』や『宇宙からの色』が本巻におさめられている。その他にも科学に造詣の深いラヴクラフトらしい作品が、この4巻に集まっている。主人公の感じる恐れにも共感しながらもまた、正体を見たいという欲求にも共感するので面白いのだろう。未知のものを暴くことの恐ろしさ。
藤月はな(灯れ松明の火)
110
リドリー・スコット監督の『プロメテウス』公開でお流れになったギレルモ・デル・トロ監督の『狂気の山脈にて』の原作も収録。「宇宙からの色」は内容から見ると題名は大きな間違いをさせるのでは・・・?とは言え、唯一の目撃者であるアミもSAN値を直撃されたかもしれない予感が怖すぎる・・・。「故アーサー(以下略)」はラブクラフトの黒人蔑視が打ち出されていて読んでいて居心地が悪かったです。一方で「冷気」の底冷えする寒さの理由と「彼方より」のティリンギャーストが仄めかす使用人達が消息不明になった過程を想像すると悍ましい。2017/09/07
Bugsy Malone
64
解説によれば、科学に比重の置かれた作品を中心に6つの短篇と長篇「狂気の山脈にて」の7編を収録。南極探検隊によりじわじわと遥かなる太古からの〈旧支配者〉の歴史が明らかにされてゆく「狂気の山脈にて」は勿論、「宇宙からの色」の迫り来る恐怖や、特に印象に残った「眠りの壁の彼方」を含め、7編とも面白い作品ばかりだった。2016/02/07
財布にジャック
63
「宇宙からの色」はものすごく怖かったです。思い出すのも嫌なほど・・・。「狂気の山脈にて」は南極が舞台で長編なんですが、ラヴクラフトの思い入れが感じられる作品でした。地球がまだ若かった頃に他の星ぼしから到来した大いなる旧支配者・・・異質な進化によってつくられた組織と、この惑星がいまだかつて生み出したことのない能力をもつ生物・・・気になる方は是非お読みになってみてください。2010/11/10
Kircheis
59
★★★☆☆ 最初の「宇宙からの色」はラヴクラフト作品の中でもトップクラスにお気に入りの作品である。崩壊していく家族の姿が悲しい。 その他では、正統派ホラーの「冷気」や、「故アーサー・ジャーミン〜」の哀しき運命も好み。 長編「狂気の山脈にて」は、ラヴクラフトの世界観を知る上では超重要な話であり、序盤のレイク隊が悲劇に見舞われるまではかなりドキドキして面白いのだが、主人公とダンフォースが奥地に探検する辺りからはダラダラと過去の話が語られるのが大半で、脱出シーンも生還が分かっているだけに緊迫感を欠くのが残念。2018/09/02