内容説明
細川忠利侯の一周忌に、世上に名高い阿部一族の反逆事件が起きる。数馬など若侍の死に心を痛め、武蔵は岩殿山の巌頭で日輪と対決する極限の戦いに挑む。それは己との最後の戦いでもあった。「我事において後悔せず」。六十二歳、巨星は墜ちたが『五輪書』は残り、その合理的な兵法は永遠に生き続けている。
感想・レビュー
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旗本多忙
3
吉川版が武蔵の青春なら、小山版は壮年から晩年の円熟した武蔵の人間模様だろうか。今もって武蔵の精神を好む人は多い。巌流島以降の武蔵の足跡を書いた著者畢生の小説とも言えますね。武蔵は剣で天地間の理法を極めんと全てのものを敵とみなし、江戸城に於て神と対峙することが究極の目的だと将軍秀忠に語る。生涯60余度不敗の戦いで武蔵は何を得たのか。下手な啓発書籍より数段感化される素晴らしい小説です。古くなっても捨てられない、そんな本ですかね
廊下とんび
3
ついに読み終えてしまった!そんな感じ。最初は吉川英治の大作がちらついて比較してしまったし、古事記的神話の話が出て来て里見八犬伝か?なんて呆れそうにもなったけど次第にかの吉川大作品とは別物でより高次元の求道を描いた作品と思えて来た。この作品の武蔵は寂しく、哀しく、読んでいて辛ささえ感じてしまった2016/01/24
inami
0
大山倍達のベース2004/09/02
Shoichi Kambe
0
*岩殿山。武蔵が剣禅一致の境涯を目指し決死の修行をしている… *天地自然そのままを鏡として…こうして20年、50の坂を越えたとき、万理一空の境地を勝ち取ったのだ。 *「五輪書」序文。29歳、佐々木小次郎との決戦頃までの強さを反省した。…50歳の頃より以来は尋ねいるべき道なくして、光陰を送る。兵法の利に任せて、諸芸諸能の道となせば、万事において、われに師匠なし、今この書を作るといえども、仏法儒道の古語をもからず、軍記軍法の古きことをももちいす、この一流の見立て、実の心を顕す事、天道と観世音を鏡として…2022/11/26
びぎR
0
『細川家は阿部一族の反逆事件に揺れる。武蔵は岩殿山で結跏趺坐し真如を求める。若き僧春山の助力もあり遂に悟道の境地に至り、五輪書を書き示す。一方、武蔵と関わった由利、お松ら女たちは自らの信念に沿った生き様を見せる。六十二歳で遂に巨星は堕ちる。』全6巻読了。終盤は内面の精神的、宗教的な話になってきた。この辺の話になると私には到底理解できるようなものではないが、ただの兵法者ではない迫力は感じる。波乱の生涯で周囲に与えた影響は著しいものがあり正に風雲児であった。【続く】2019/10/24