出版社内容情報
日本語学、日本語の歴史、日本語の表記をとおして日本語を捉えることを専門とする著者が、独自のアプローチで小林秀雄の大作「本居宣長」を「よむ」。宣長のテキストそのものに踏み込み、小林秀雄「本居宣長」というテキストをあえて言語学的・文献学的な枠組みのなかで読むこともしながら、本居宣長=18世紀の日本人と小林秀雄=20世紀の日本人の言語観の重なりとズレを確認することで、過去の日本、現在の「日本を知る」1冊。
【目次】
はじめに
日本を知る――日本語の歴史と日本の歴史
小林秀雄「本居宣長」をよむということ
売れた単行本『本居宣長』/ 雑誌本文と単行本本文 / 個の「追跡」とテキストの「追跡」/ 重層的な構造
序章 「本居宣長」を読み始める前に
心・言・事と情報のアウトプット
ことがら情報と気持ち・感情情報 / うつりゆくことば――ソシュールとコセリウ / うつりゆく心――本居宣長「うひ山ぶみ」
小林秀雄の方法
雑誌『新潮』での連載まで
第一章「本居宣長」を「追跡」する
思想・肉声・無私・沈黙
思想・思想家という言葉 / 漢字の力 / 肉声 / 無私 / 沈黙
第二章 ヒューマニスト+フィロロジスト、本居宣長
「宣長問題」と小林秀雄
加藤周一の言説 / 子安宣郎の言説 / 村岡典嗣と「宣長問題」
村岡典嗣の「文献学」と philology
芳賀矢一の国学・文献学 / 山田孝雄の国学・文献学
ヒューマニスト+フィロロジスト=本居宣長
『古事記』の背後に聞こえる「声」
第三章 宣長にとっての和歌
宣長にとっての「歌」と「道」
和歌とは何か
江戸時代における和歌
十七世紀――堂上の時代 / 十八世紀――堂上から地下へ、地下から地方へ
国学者にとっての和歌
富士谷成章の「六運略図并辨」/ 富士谷御杖の『真言弁』
宣長にとっての和歌
「排蘆小船」を手がかりに / 「石上私淑言」を手がかりに / 「うひ山ぶみ」を手がかりに / 『玉勝間』をてがかりに / 歌の「私性」/ 心と詞と――宣長の「実情」
小林秀雄の言説
第四章 もののあはれを知る
宣長の「もののあはれ」
言語空間、言語の変化 / 宣長の『源氏物語』読み解き / 契沖の影響 /「紫文要領」にみえる「もののあはれ」
小林秀雄の「もののあはれ」
第五章 「漢意」と「やまとだましい・やまとごころ」
「漢意儒意」/「やまとたましひ」「やまとごゝろ」/ 漢文訓読 /「漢意」
第六章 小林秀雄の言語観
枕詞とメタファー / 古言を得る / 日本語を文字であらわす / 言霊
第七章 『本居宣長』はどう受けとめられたか
一九七〇年代の言説
高橋英夫の言説:一九七〇年・一九七七年 / 吉本隆明の言説 1:一九七七年 / 吉本隆明の言説 2:一九七八年 / 足立和浩の言説:一九七九年
一九八〇年代の言説
蓮實重彦の言説:一九八二年 / 饗庭孝男の言説:一九八四~一九八六年
一九九〇~二〇〇〇年代の言説
前田英樹の言説:一九九五~二〇一五年 / 吉本隆明の言説 3:二〇〇一年 / 橋本治



