内容説明
2003年刊行の第一歌集を新装版として18年ぶりに復刊。電子版だけで流通した第二歌集『星か花を』(66首)も併せて収録。
【収録歌より】
「水菜買いにきた」
三時間高速を飛ばしてこのへやに
みずな
かいに。
そこにいるときすこしさみしそうなとき
めをつむる。あまい。そこにいたとき
うすむらさきずっとみていたらそのようなおんなのひとになれるかもしれない
濃い。これはなんなんアボガド?
しらないものこわいといつもいつもいうのに
たくさんのおんなのひとがいるなかで
わたしをみつけてくれてありがとう
【著者】
今橋愛
1976年大阪生まれ。大阪在住。歌人。一児の母。大学在学中に岡井隆の授業で現代短歌に触れ、23才で短歌をつくりはじめる。他の歌集に『としごのおやこ』。共著に『いまドキ語訳越中万葉』『トリビュート百人一首』がある。
目次
O脚の膝
星か花を
たくさんのおんなのひとがいるなかで
世界の関心
そらをとぶかも ―テーマ「義経忌」―
せ、せ、せかい
スクンビットソイ33
28の女のあし
わかった
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
15
二行短歌はリズムも意味も汲み取りやすい。一行ひらがなは意味の誤読をさそっているかのようで読みにくいのだが。三行は短歌よりも短詩で、リフレインや繰り返す助詞でリズムを取る感じで短歌というものに縛られなければ読みやすいかもしれない。タイトルから「O嬢の物語」を連想したがエロティックな内面と意志的な体面(表現)のぶつかりあいというような、愛の短歌なのか?「義経忌」とか町田康好きなのか?このへんはもはやパンク短歌。2025/07/15
qoop
7
ひらがなと改行の多用がとにかく印象的で、改めて詩歌が備えるタイポグラフィックな魅力を再認識した。口に出した際の音の響きと目で見た際の形の面白み、双方を意識した詩作は珍しくはないが、目への意識がここまで強い歌集はなかなかないかも知れないな、と。/濃い。これはなんなんアボガド?/しらないものこわいといつもいつもいうのに/おでこからわたしだけのひかりでてると思わなきゃ/ここでやっていけない/としとったひともわかいひともふまじめもまじめもせいきがついたらおとこ(/=改行)2021/08/22
ぷほは
5
穂村弘の紹介で、初めてこの人の歌に触れた時の衝撃を今でも覚えている。「ゆれているうすむらさきがこんなにもすべてのことをゆるしてくれる」。全てが平仮名であることの迫力に加え、U音の頭韻が気持ちいい。総てを赦す薄紫、どんな色の藤袴なんだろう。「たくさんのおんなのひとがいるなかで/わたしをみつけてくれてありがとう」。花鳥風月も近代的自我の意識も、ここでは蒸発してしまっている。前衛短歌運動の懊悩も、ニューウェーブの軽やかさもないままで、ただ淡々と日常のラディカルさがギリギリ三十一音の定型に憑いている。その黙示録。2021/07/29
yumicomachi
2
多行わかち書きと平仮名の多用で独自の文体を持つ短歌作品群。恋愛と性愛の歌が多いのだが、それ以外の歌に私は惹かれた。【日本語にうえていますと手紙来て/日本語いがいの空は広そう】【本買って少し気分が晴れました/副詞にひかりをあてる本です】【こくごの本/そらでとなえる少女らに/しあわせ/ふつうの二倍あげて】【きゅうかくが/ばかになるまえに/記憶には/パセリのしおりをはさみこむこと】など。『O脚の膝』(2003年、北溟社)に『星か花を』(2015年、マイナビ出版)を加えて一冊にしたもの。2021年6月25日発行。2026/06/30
たおちゃん
2
ちからなくさしだす舌でだらしないのがみたいんです今みたいんです/過去にだれともであわないでよ 若いきすしないでよ 今 産まれてきてよ/お花見にいきましょうね日曜の昼間ふたりでねもうしんどいね//ここまで鋭敏にかつ的確に表す言葉を持っていたかどうかは別として、私は確かにかつてこの空気の中を泳いでいたし、こういう恋をしたし、こういう失望をしたし、その結果ついたまま治らない傷のあとも確かにあるし、でももうすべて知らない場所で、戻りたいけど戻れなくてぜんぶ幻だったみたいでかなしいなあみたいな気持ち。2021/08/05
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