内容説明
民俗学者・蓮丈那智と助手の内藤三國は差出人不明のメールを受け取った。「鬼無里がなくなる……」と。2人は、かつて訪れた小村に思いを馳せる。5年前、鬼の面をつけ、家々を練り歩く神事の最中に起きた殺人事件。メールに誘われるようにふたたび向かった村では、ある女性が待ち受けていた(「鬼無里」)。美しい海に面する、宮崎県の小さな村。古来の儀礼にのっとった荘厳な祭祀の最中、隔離された小舟で起きた殺人事件の驚くべき真相とは(「補堕落」)。テレビ出演したばかりの那智の研究室に届いた1通の手紙。どうやらテレビを見て連絡をしてきたらしい。それは、在野の民俗学研究者からの「天鬼年代記」についての調査依頼だった――北森鴻氏がテレビドラマ第2弾用に書き下ろし、お蔵入りとなっていたプロットを基に書かれた表題作など6篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソラ
10
【読了】D 中編集で6編のうち4編が後を引き継いだ浅野氏の作品。言われてみなければ別人が書いたとは思えないレベルでオリジナルに寄せてる印象。2024/11/10
九曜紋
10
6篇の短篇を収録。うち2篇は北森鴻の手によるもの。表題作「天鬼越」は北森亡き後、北森の残したプロットを元に、公私共にパートナーであった浅野里沙子が完成させたもの。あとの3篇は浅野のオリジナル。少なくとも私には北森作品と浅野作品に内容の優劣は感じ取ることはできない。まるで北森の魂魄が乗り移ったかのような浅野の筆力には感嘆するしかない。蓮丈那智とその周りを固める内藤三國ら登場人物に感情移入してしまったがゆえに、「これが最終作」という事実を受け入れなければならないのが正直辛い。2024/10/27
ほたる
8
今までと打って変わってミステリ色が濃い一冊。そして引き継いで描いている浅野氏の寄せ方と言ってしまうが、これが非常に巧い。これで最後だけれども、表題作は非常に蓮丈那智らしいスタンダードな作品だと思う。「偽蜃絵」がお見事でした。2024/11/03
Tatsuo Ohtaka
3
作者が遺したシリーズ短編2本と表題作のドラマ版プロットを核に、パートナーが短編化した表題作とオリジナル短編3作で構成。ごちゃごちゃ文句を言うより、未読の短編が読めたことを喜ぶべきだろう。2024/11/10
しゅがー
2
最終巻という事で終わりが描かれるのかと思いきや、あくまで今までの物語を含め全てのお話が彼女と彼らのフィールドワークの一部であり、これからも描かれなくともまだ続いていくのだと思える良い終わりだった。2024/10/30