内容説明
少ない市民の総力を結集することで大国ペルシアを打破したアテネ。不世出の指導者ペリクレスの手腕により、エーゲ海の盟主として君臨し、その栄光は絶頂をむかえた。しかし、デマゴーグが市民を煽動するポピュリズムが台頭すると、スパルタとの不毛きわまる泥沼の戦争へと突き進んでしまうのだった――。栄光が瞬く間に霧散してしまう過程を緻密に描き、民主主義の本質をえぐり出した歴史大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
107
やはり「ローマ人の物語」と比較して、若干もの足りなさを覚えます。というのはギリシャというよりもその一つの都市国家のアテネを中心に描いているからなのかもしれません。というよりも、この都市国家が一つの国家であったという事なのでしょう。スパルタとの戦いなどが中心に描かれていますが、人物もあまりなじみのない名前などが出てきて(せいぜいペリクレス)なにか没入できませんでした。2023/12/26
読特
45
戦後の高度成長。絶頂期を迎え、バブル。その後の失われた30年。落ちていく悔しさ、惨めさ。経済学を称するいい加減な説が蔓延る。緊縮財政。官から民へ。世界一の純資産国が何故か外資に依存する。ガラパゴスと揶揄して成功の源を捨て去る…ペルシア戦役に勝利した後、エーゲ海の盟主となるアテネ。絶頂期はペリクレスの死後に終焉する。ポピュリズムの台頭。やめられぬペロポネソス戦役。無謀なシチリア増派と惨敗。崩壊するデロス同盟。スパルタへの全面降伏…民主主義が衆愚政治になるのは宿命なのか?いや、衆が愚にならなければよいのだ。2023/10/04
piro
43
アテネの黄金時代・ペリクレス時代からペロポネソス戦役を経て覇権を失うまでを描いた第2巻。まさに激動の時代で興味深く、どんどん読み進められますが、それでもなかなか残りページが減らない分厚さ(笑)。民主政を「発明」したアテネであっても強力なリーダーがいないと混迷すると言う皮肉。民主政が万能ではなく、衆愚政に堕落する危険を孕んでいると言う点は、現代にも通じる教訓でしょう。そして27年もの長期に及ぶペロポネソス戦役の結果、勝ったのが頑迷な保守性を貫いた「非民主」のスパルタだったと言う事にも考えさせられました。2023/09/25
ヨーイチ
36
看板に偽りとまでは言えないが、表題のギリシャ人はアテネ人では?と思える程、都市国家アテネの盛衰が語られている。見てきたかの様にサラッとBC400辺りの出来事を教えてくれる。他の地域はどうだったの?てな疑問も浮かぶが、取り敢えず「進んだ社会」と乱暴な理解をしておこう。ローマ帝国、ヨーロッパ社会、ルネサンス、産業革命でこの地域の研究、認識が異常に進んでいるってことだろう。続く2023/10/05
Shun
36
第2巻。ギリシアの二大国アテネとスパルタが中心となり東方から侵攻してきた大国ペルシアと戦い退けたのが前回の内容。そして戦略的な働きで最も重要な人物テミストクレスが退場し、2巻ではテミストクレス以後のアテネを率いたカリスマ、ペリクレスの登場となる。この人物もまたテミストクレスが導いた民主政国家アテネをより強大なものとするに十分な働きをした政治家で、特にその説得力には目を見張るものがあった。そんな覇権国アテネが衰退するとは誰が予想しただろうか、本作では民主政崩壊の原因にもなったデマゴーグについて触れている。2023/10/01