内容説明
資本主義の生育の土壌としては、イスラーム教圏や中華文明のほうが遥かに有利であったように見える。しかし実際に、無限の資本蓄積を求める「主体」が生まれ出たのは「長い16世紀」を経た西洋キリスト教圏からだった! 見えない時間を先取りし、終わってはならない経済「ゲーム」が終わることへの恐怖によって動くシステムはいかにして生まれたのか? プロテスタンティズムの倫理の特異性をあらためて腑分けし、近代が生み出した新たな「人間」存在の本質を解明する。
目次
まえがき
第1章 失敗した贋金作り
第2章 カトリックの政治革命/プロテスタントの精神革命
第3章 貨幣論への迂回
第4章 貨幣の抽象化作用
第5章 資本主義の猥褻な精神
第6章 黙示録的ゲーム
第7章 〈金銀/紙幣〉としての貨幣
第8章 商品の救済/人間の救済
第9章 召命と階級
第10章 終わりなき終わり
第11章 予定説の効果
第12章 予定説がとり残したもの
第13章 〈増殖する知〉のふしぎ
第14章 銀行というなぞ
第15章 二つのスペキュレーション
第16章 剰余権力
第17章 〈主体〉の産出
第18章 最初の小説
第19章 小説の不安
第20章 神に見捨てられた世界の叙事詩......なのか?
第21章 虚構性の勃興
第22章 役に立たない辞典
第23章 小説的衝動の帰趨
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
39
はじめてこのシリーズを読みますが、興味のある読者には途中からでも読めるとお伝えしたいと思います。本書で論じられている資本主義とは何か、貨幣とは何かは著者の古い本『資本主義のパラドックス』での議論と同じで、文中に『近世編』の補足で引用された箇所も同書の別の章での議論そのままでした。つまり、著者の着想は若い頃とそう変わりが無い。それを若い時に考えていたこと自体が凄いことですが、以前は濃密で理解し辛かった。しかし、今回は口語的で平易に改良されています。「、これである。」という大澤語は、重要箇所の目印です。本書で2021/05/14
kuppy
2
何度も意識が飛んでしまうほど私には難解なところもありましたが、近代がどのように形作られていったを知るヒントとなった。メインの流れとしては最後の審判と神しか知ることの出来ないその結果、結果が決まっていても天国に行けることを信じ日々告白を重ねていくプロテスタンティズム、ただ小さな審判はサッカーのゴールのように繰り返される。そこから資本主義、現代小説、近代科学などが影響を受けながら進展していく。欧米の映画や小説には、終末思想、予定されている未来とその超克、偶然性などその手の要素がちりばめられていると感じる。2021/08/26
MrO
1
小説かあ2022/09/11
kumoi
0
資本主義に対する論考が印象に残った。労働者の使用価値は、価値体系を先取りすることにあるらしい。2023/10/23
YASU
0
プロテスタントにおける神=第三者の審級をキー概念に,資本の無限増殖論じる前半はとても分かり易く,その勢いで六百頁近い大部を一気に読むことができた.終盤の小説論はちょっと難解.私の理解力不足かもしれないが.属性に縛られていた諸個人が自由を獲得し,あらゆる(無限の,かつ虚構の)可能性を獲得した,それが近代的主体の誕生であった,と理解した.2022/01/23
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